2014年2月。海のない県が、"陸の孤島"になった。——河口湖143センチ、甲府114センチ。観測史上1位の雪。

山梨県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。

2014年2月の記録的な豪雪で、河口湖では143センチ、甲府では114センチの最深積雪を記録しました。いずれも観測史上1位の更新です。

道路は各地で通行止めとなり、集落は孤立しました。大月市では4,760戸が断水しています。

道路が寸断されて部品が届かず、製造業では生産が停止しました。店頭からは生鮮食品が消え、ガソリンスタンドへの燃料配送も滞ります。孤立した地域への医薬品と灯油は、ヘリコプターで運ばれました。

建物の被害は限られていました。それでも道路と燃料と物流が止まり、山梨の事業は止まりました。

そして道路と燃料と物流を止めるのは、雪だけではありません。地震も、富士山の灰も、同じ場所を止めます。

次に道が止まる日の前に、あなたの会社の「止まり方」を知っておいてください。

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海のない県の、五つの止まり方

1. 内陸地震 —— 「南海トラフだけ」でも「断層だけ」でもない

県の2023年の地震被害想定は、南海トラフ巨大地震、首都直下地震、糸魚川-静岡構造線断層帯、曽根丘陵断層帯、身延断層など10の地震を対象にしています。

南海トラフ巨大地震(東側ケース)では、県内最大震度7、全壊・全焼60,017棟、断水39.2万人、停電の影響62.4万人、避難者14.0万人。糸魚川-静岡構造線断層帯の南部区間では、全壊・全焼72,761棟。県北西部を含む広い範囲で強い揺れと、山地の交通・ライフラインの同時停止が想定されています。

この想定では、南海トラフで3,019人、曽根丘陵断層帯で3,843人の方が亡くなるとされています。また2014年2月の豪雪では、県内で5人の方が亡くなり、37人が重傷を負いました。心より哀悼の意を表します。

2026年6月26日の夜、山梨県東部・富士五湖を震源とするマグニチュード5.6の地震で、富士河口湖町は震度6弱、県内15地点で震度5弱を観測しました。大月市の観測点では1,004ガルの加速度を記録しています。住家の倒壊は報告されていませんが、震度6弱の揺れは、この想定が机上のものでないことを示しました。

復旧の想定は、停電と電話が概ね10日、上水道が概ね2〜3か月。「72時間・10日・1か月」の三段階で考える材料になります。

2. 足元の活断層 —— 「県内で最も大きい想定」は、盆地の真下にある

「海のない県」の足元を、国が評価する主要活断層が走っています。

糸魚川-静岡構造線断層帯(中南部区間)はマグニチュード7.4程度で、国の長期評価ではSランク(発生可能性が高いグループ)。県北西部から諏訪方面へ延びる、本州を分ける大断層系の一部です。県南部では、静岡県境をまたぐ富士川河口断層帯(マグニチュード8.0程度)も、同じSランクに区分されています。

曽根丘陵断層帯はマグニチュード7.3程度で、甲府盆地南縁の直下にあります。この断層が動いた場合の県の想定被害は、全壊・全焼94,102棟、避難者20.7万人。県内のどの想定地震よりも大きいものです。

順番は、起きやすさの順には来ません。 国の長期評価では、曽根丘陵断層帯は「やや高い」(Aランク)に区分されています。Sランクより低い区分です。しかし2016年の熊本地震は、発生前に発生確率が低いとされていた断層で起きました。

県内の主要活断層帯(国の長期評価)

地震調査研究推進本部は、主要活断層帯で起こる地震の発生確率を相対的な高さで区分しています。県内では、次の活動区間が最も高い区分(Sランク)にあります(2026年1月1日算定)。

この区分は、発生時期や個々の事業所の被害を予測するものではありません。国の評価の区分は、被害の大きさを意味しません。区分が低い断層でも地震は起こり、国は「ランク分けに関わらず、どの場所でも強い揺れに見舞われるおそれがある」と注記しています。自社の所在地と断層帯の位置関係は、県の被害想定と国のハザードマップで確かめてください。

断層の評価は定性表現で示しています。国(地震調査研究推進本部)は今後30年以内の地震発生確率が3%以上を「Sランク」と表記し、地震後経過率(前回の活動からの経過時間を平均活動間隔で割った値)が0.7以上の活断層には、ランクに「*」を付記しています。同じ表に載る塩沢断層帯は神奈川県・静岡県、糸魚川-静岡構造線断層帯 北部(小谷-明科)区間・中北部(明科-諏訪湖南方)区間・木曽山脈西縁断層帯 主部(南部)・境峠・神谷断層帯 主部は長野県に位置するため除いています。出典: 地震調査研究推進本部「山梨県の地震活動の特徴」(2026年1月1日算定)/同「今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧」(令和8年1月14日現在)注3

自社で確認すること: 事業所と従業員宅が、10の想定地震のどれでどう揺れるか。県平均ではなく住所で。

3. 富士山 —— 降灰は「富士山に近い会社」だけの問題ではない

溶岩流、火砕流、融雪型の火山泥流、噴石。これらは富士・東部の生命と施設の問題です。

しかし降灰は違います。 県内の全域、そして首都圏の、車両・道路・鉄道・空調・配送・農作物の問題になります。

だから山梨のBCPには、他県にない問いが一つ加わります。「県外に代替拠点がある」では足りません。その代替先は、同じ降灰圏に入りませんか。

自社で確認すること: 代替拠点の位置を、降灰の想定範囲と重ねる。

4. 豪雪・山地交通 —— 2014年が実証した「最後の数キロ」問題

中央道や国道が回復しても、従業員の自宅や配送先までの県道・市町村道が通れなければ、事業は動きません。

自社で確認すること: 幹線の回復ではなく、最後の数キロが通れるか。

5. 豪雨・土砂 —— ハザードマップは「自社の浸水深」で終わらせない

降雨のときは山間地の斜面崩壊が拡大し、交通の途絶による孤立集落の発生が想定されています。

自社で確認すること: 仕入先、配送路、最後の配送先まで地図に置く。

止まるのは、いつも同じ五つ

災害 共通して止まる機能
地震・噴火・豪雪・豪雨土砂 道路 / 燃料 / 水・電気 / 通信 / 人の移動

災害別に三冊の計画を作る必要はありません。共通して止まる機能を軸に、動かせる一冊を作ればいい。

雪は、屋根を壊す前に、道路を止めた

AIで生成したイメージ画像。盆地の果樹園に囲まれた工場と山並み。
AIで生成したイメージ画像です(実在の風景ではありません)。

道路

主要な幹線が回復した前後も、生活道路、配送先、従業員の自宅までの道が通れませんでした。富士吉田・都留・山中湖・身延・北杜などで、燃料供給の優先順位を確認する必要が生じています。

燃料

発電機も営業車もあるのに、燃料が届きません。 石油元売への早期配送の要請、タンクローリーの緊急車両扱い、鉄道による甲府油槽所への搬入再開。平時には見えない「燃料・物流・道路・行政連携」の依存関係が、このとき露出しました。

製造

工場は無傷でも、部品が届かず生産が停止しました。材料・部品・包装・燃料・出荷便・顧客の受入れが同じ日に使えるかどうかで、事業継続は決まります。

医療・生活

透析患者の搬送、孤立地域への医薬品・灯油・食料の輸送にヘリコプターが使われました。従業員の家族の事情は、出社の可否に直結します。

来訪者は「帰れない人」になる

山梨を訪れる観光客の78.2%は自家用車で来ます。道路が止まる災害では、来訪者は「帰れない人」になります。2024年の観光入込は3,158.8万人。うち富士・東部の圏域だけで54.8%を占めます。

従業員の安否確認と同じ重さで、来訪者の滞留への対応が要ります。

これは雪の話ではありません。地震でも、降灰でも、同じ道路・同じ燃料・同じ物流が止まります。2014年に起きたことは、山梨の「止まり方の型」そのものです。

二つの読者へ

まだ策定していない会社へ —— 「やるつもり」は、もう全国以上にある

山梨の企業のBCP策定意向あり(策定済み・策定中・検討中の合計)は56.1%で、全国の50.5%を上回ります(帝国データバンク・2026年6月25日公表・調査は2026年5月18〜31日の都道府県別)。

しかし、策定済みは19.1%です(帝国データバンク 山梨県版・2025年9月8日公表・調査は2025年5月・県内238社を対象に115社が回答)。2024年の21.4%(調査開始以来の最高)からは低下しています。

意欲が足りないのではありません。全国調査でも山梨の調査でも、未策定の理由の上位は同じです。「スキル」「人材」「時間」の不足。 意識ではなく、経営資源の構造問題です。

全国では、中小企業の策定率は18.3%で、大企業の39.9%とは20ポイント以上の差があります(帝国データバンク・2026年)。小さな会社ほど、作る手が足りません。

山梨県の2025年の数値は回答企業115社の割合であり、県内全企業の推計ではありません。

スキル・人材・時間がないなら、それを外部化すればいい。所在地と業種を入れれば、山梨県の被害想定と2014年の実記録を織り込んだ初版のBCPドラフトができます。

計画はあるが動かない会社へ —— その計画に、「雪」と「灰」と「燃料」は書いてあるか

地震の想定だけのBCPは、山梨では半分しかカバーしません。 2014年に事業を止めたのは地震ではなく雪でした。そして次に止めるのは、灰かもしれません。

3つだけ、点検してみてください。

  1. 燃料 —— 発電機・営業車・暖房の燃料の在庫日数と、補給できない場合の優先順位を書いてありますか。
  2. 降灰 —— 降灰時に車を走らせる条件、吸気・フィルター・精密機器の保護、配送停止の判断基準がありますか。
  3. 来訪者 —— 県外客や訪日客の避難誘導・滞在・予約連絡を、従業員の安否確認と別立てで決めてありますか。

3つのうち一つでも空欄なら、その計画は「地震の日」しか守ってくれません。

山梨の支援リソース

リソース 内容
事業継続力強化計画 防災・減災の事前対策計画を経済産業大臣が認定します。税制措置、金融支援、補助金審査上の加点があります。山梨県の累計認定は1,000件を超えています(令和8年7月末時点)
山梨県 事業継続力強化計画策定セミナー 策定の方法やリスクファイナンスなどを甲府・富士吉田で毎年開催しています(無料)
県内の相談窓口(山梨県中小企業団体中央会・やまなし産業支援機構) 商工会・商工会議所も含め、専門家などによる策定支援があります。いずれも県のBCP支援協定の当事者です
県×損害保険会社×商工団体のBCP支援協定 2016年10月に締結されました。保険会社の知見も含めた策定支援の体制があります

「セミナーで学ぶ時間が取れない」「支援はあっても、書く手が足りない」。意欲と策定済みの差が埋まらない理由は、ここにあります。

BCP-AIは、この間を埋める道具です。支援機関の代わりではなく、その前工程として、あるいは並走として使ってください。

事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。

AIで生成したイメージ画像。果樹園沿いの道に面した倉庫と室外機。
AIで生成したイメージ画像です(実在の風景ではありません)。

次に道が止まる日は、予報に出ないかもしれない。

2014年の雪には、まだ予報がありました。それでも山梨の事業は止まりました。地震に予報はありません。噴火の警報が、雪の予報ほどの猶予をくれるとも限りません。

BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。

作るのは、災害別の三冊ではありません。道路・燃料・水・通信・人。共通して止まる機能を軸にした、動かせる一冊です。

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