震源は、隣の県だった。
それでも富山では、18,938戸の水が止まった。
富山県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。
能登半島地震で被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
2024年1月1日、午後4時10分。県内7つの市町村で震度5強を観測しました。富山県で記録された揺れとしては、観測史上最大です。富山検潮所には3分後に津波の第一波が届き、25分後には79センチの最大波が観測されました。
そのあとに続いたことを、多くの方が覚えているはずです。6つの市で18,938戸が断水し、全戸の解消まで約3週間かかりました。避難する車が集中し、県内の主要道路11区間が渋滞しました。県内沿岸部では液状化が起きました。正月の宿は、キャンセルが続きました。
建物が無事だった会社も、あの数週間は平常ではなかったはずです。水を使う工程、出勤、配送、来客。止まり方は会社ごとに違いました。
次に止まるとき、御社の「戻す順番」は決まっていますか。
富山県固有の災害リスク
富山で考えておくべき災害を、経験したものから順に4つ挙げます。数値には出典と時点を添えています。
カード1: 地震・津波・液状化 —— 経験した揺れと、まだ動いていない断層
2024年の能登半島地震では、県内7つの市町村が震度5強を観測しました。県内沿岸部の複数の地区で液状化が起き、住家に被害が生じました。
一方で、県が「本県で最も大きな被害が想定される」地震として位置づけているのは、呉羽山断層帯(マグニチュード7.4)です。県西部から富山平野にかけて、建物・道路・ライフラインが広い範囲で同時に傷み、県内の人手も取引先も公共サービスも、同じ期間に細る。そういう規模を想定しておく必要があります。詳細は県の被害想定調査(平成23年度)に掲載されています。
津波は、富山湾では到達が速いのが特徴です。2024年の実績では、第一波が3分で届きました。県は平成28年度に津波浸水想定を公表しています。
県内の主要活断層帯(国の長期評価)
地震調査研究推進本部は、主要活断層帯で起こる地震の発生確率を相対的な高さで区分しています。県内では、次の活動区間が最も高い区分(Sランク)にあります(2026年1月1日算定)。
- 砺波平野断層帯(東部)(マグニチュード7.0程度)
- 呉羽山断層帯(同7.2程度)
この区分は、発生時期や個々の事業所の被害を予測するものではありません。国の評価の区分は、被害の大きさを意味しません。区分が低い断層でも地震は起こり、国は「ランク分けに関わらず、どの場所でも強い揺れに見舞われるおそれがある」と注記しています。自社の所在地と断層帯の位置関係は、県の被害想定と国のハザードマップで確かめてください。
断層の評価は定性表現で示しています。国(地震調査研究推進本部)は今後30年以内の地震発生確率が3%以上を「Sランク」と表記し、地震後経過率(前回の活動からの経過時間を平均活動間隔で割った値)が0.7以上の活断層には、ランクに「*」を付記しています。同じ表に載る糸魚川−静岡構造線断層帯 北部(小谷−明科)区間・中北部(明科−諏訪湖南方)区間と境峠・神谷断層帯 主部は長野県に位置するため除いています。同じ表に載る糸魚川−静岡構造線断層帯 中南部(諏訪湖北方−下蔦木)区間は長野県・山梨県に位置するため除いています。同じ表に載る高山・大原断層帯 国府断層帯は岐阜県に位置するため除いています。同じ表に載る森本・富樫断層帯は石川県に位置するため除いています。出典: 地震調査研究推進本部「富山県の地震活動の特徴」(2026年1月1日算定)/同「今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧」(令和8年1月14日現在)注3
自社で確認すること: 沿岸部や旧河道にある事業所の液状化リスク。設備の固定。揺れのあと、事業所を離れる判断を誰がするか。
カード2: 洪水・内水 —— 大河川の県ではなく、いくつもの中小河川の県
県が管理する水位周知河川41河川に加え、中小河川210河川についても、想定最大規模(おおむね1,000年に1度)の浸水想定図の公表が令和7年に完了しました。常願寺川や神通川などは、国が管理しています。
「大きな川の近くではないから大丈夫」とは、もう言えない状態に地図が更新されています。事業所、倉庫、従業員の自宅、配送経路を、同じ地図で点検してください。
2026年8月27日からの大雨により、高岡市、氷見市、小矢部市、射水市に災害救助法が適用されました。
この大雨で被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
自社で確認すること: 浸水の深さだけでなく、水が引くまでの時間。進入路が通れるかどうか。
カード3: 土砂災害と「地震のあとの雨」—— 基準が変わった県
県内の土砂災害警戒区域は4,886区域(急傾斜2,845、土石流1,382、地すべり659)、そのうち特別警戒区域は3,645です(2026年7月8日時点)。
富山には、複合災害の実例があります。能登半島地震の直後、地盤の緩みを考慮して、県内6つの市で土砂災害警戒情報の発表基準が通常の8割に引き下げられました。通常の基準に戻ったのは、およそ1年後の2025年1月です。地震が終わっても、雨の危険度は元に戻らない。災害を1種類ずつ別々に考える計画の弱点を、県自身の運用が示しています。
自社で確認すること: 警戒区域は山間部だけの話ではありません。通勤、仕入れ、配送の経路がどこを通るか。
カード4: 豪雪 —— 壊れないのに、止まる
雪害は、建物の被害としては現れません。出勤できない、配送が遅れる、車両が動けない、除雪の人手が足りない、停電や通信障害が重なる。そういう連鎖として現れます。
計画に落とすなら、気象警報が出たあとの「出社」「受発注と納品」「休業または代替勤務」の判断を、誰が何時に決めるかまで書いておくことです。
富山には強みがあります。雪は毎年来ます。毎冬が、計画のリハーサルになります。
自社が無事でも、止まる —— 2024年1月、富山で起きたこと
「自社に被害がなくても事業は止まる」ということを、富山は一つの災害の中で、複数の経路から経験しました。2024年1月に起きたことを、止まり方ごとに分けて見ていきます。
水の停止 —— 断水は、断水した工程だけを止めない
6つの市で18,938戸、全戸の解消まで約3週間の断水。飲料、トイレ、衛生だけでなく、製造、洗浄、調理の工程が、続けるか止めるかの判断を迫られました。
水が止まった日、どの業務が何日で止まるか。代替の水源は、休業の判断は、書いてありますか。
道路の停止 —— 全員出社が、道路を止めた
発災当日、避難する車が集中し、主要道路11区間が渋滞しました。帰れない社員、動けない営業車、詰まる配送経路。
地震の直後に、全員が出社する必要はあるでしょうか。誰が、どこで、状況を集約しますか。
港と物流の停止 —— 伏木富山港も、無傷ではなかった
能登半島地震では、北陸地方の29港のうち22港で、防波堤や岸壁などに被害が出ました。伏木富山港は、大規模災害復興法に基づいて国が復旧を代行する対象となりました(2024年2月決定)。
環日本海物流の玄関が傷つけば、荷主企業は自社が無傷のまま、出荷と入荷が乱れます。代替の港、代替の輸送手段について、名目ではなく実際に確保できる量を、平時のうちに確かめておくことです。
需要の停止 —— 建物ではなく、予約が消えた
地震のあと観光需要が落ち込み、県内の宿泊施設でも被害とキャンセルが発生しました。物理的な被害が小さくても、売上の停止と資金繰りは、別の災害としてやってきます。
TDBの調査には、富山の旅館・ホテル業からこんな声が寄せられています。「コロナ禍や震災を経て、備えておく重要性を実感した」。
売上が1か月落ちたとき、優先して守る支払い、顧客、従業員は何ですか。
富山で確認された停止は、水・道路・港・需要の四つ。どれも、建物の無事とは関係がありませんでした。
二つの読者へ
富山の数字を、三つに分けて見る
| 何の数字か | 富山県の値 | 時点 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 事業継続力強化計画の累計認定 | 1,200件超(うち連携型50件超) | 令和8年7月末時点 | 国の制度に認定された件数。策定率ではありません |
| BCP策定意向あり(TDB) | 62.5%・全国1位 | 帝国データバンク 2026年6月25日公表(調査は2026年5月18〜31日) | 策定済み・策定中・検討中の合計 |
| BCP策定済み(DBJ北陸BCM調査) | 52%(富山の回答92社) | 2024年9〜10月 | 回答企業の値。県内全企業の策定率ではありません |
まだ策定していない会社へ —— 意向は全国1位。止めているのは、意識ではなく工程
富山のBCP策定意向は62.5%。47都道府県で1位です。必要性を疑っている県ではありません。それでも、策定済みは伸び悩んでいます。
TDBの全国調査で、策定していない理由の上位は「スキル・ノウハウがない」42.2%、「人材を確保できない」33.5%、「時間を確保できない」28.1%。DBJの調査でも、富山の未策定企業の背景はスキル・ノウハウ不足が約5割、人手不足が4割超でした。
富山に足りないのは危機感ではありません。日々の人手不足の中で、会社ごとの現実に落とし込む余力です。
体験が新しいうちが、いちばん書きやすい。あの正月に何が止まったかを覚えている人が社内にいる今なら、計画は机上の空論になりません。
BCP-AIは、完璧な計画書から始めることを勧めません。「断水した日に止まる仕事」と「大雪の前日に決めること」。この2枚から始めます。最初の一歩として、BCP-AIで初版を作るところから始められます。
計画がある会社へ —— では1月1日、その計画は動きましたか
DBJの北陸BCM調査には、こういう数字があります。
策定済みの企業でも、目標復旧時間を決めているのは約3割。定期的な訓練と見直しを実施できていない企業は、半数程度。能登半島地震では富山の回答企業の69%が事業活動に影響を受け、BCPを策定していた企業に限っても「想定どおり機能した」は3割程度、約5割は一部または全く機能しませんでした。
一方で同じ調査は、訓練を定期的にしている企業ほど機能した割合が高いことも示しています(45%対36%)。動かせば、効きます。
いまの計画の想定災害に、「断水3週間」「液状化」「地震後の土砂基準の引き下げ」「豪雪」はありますか。1月1日に詰まった箇所は、計画に反映されましたか。
年1回・20〜30分の机上訓練と見直しを、準備から記録、改訂まで続けてください(BCP-AIの訓練・見直しの機能は有料プランです)。
富山で使える支援
2026年8月27日からの大雨で影響を受けた事業者の方へ。富山県の支援策や相談窓口は、富山県の案内をご確認ください。
富山県は、中小企業向けのBCP関連施策のページで、防災・減災対策促進資金(融資)、商工会・商工会議所等による事業継続力強化支援計画、国の事業継続力強化計画、中部経済産業局のBCP情報、富山県よろず支援拠点を案内しています。
事業継続力強化計画(ジギョケイ)は、防災・減災の事前対策を経済産業大臣が認定する国の制度です。税制措置、金融支援、補助金審査上の加点があります。富山県内の累計認定は1,200件を超え、うち連携型が50件を超えています。系列や組合の単位で取り組みやすいのが、連携型が使われている理由です。
まず地図を重ねる。国土交通省のハザードマップポータルと、県の浸水想定・土砂災害マップ。最初の現状確認では、事業所、倉庫、従業員の自宅、主要経路を、住所ベースで重ねてください。
BCP-AIは、これらの支援機関の代わりではありません。融資、認定、面談の前後を埋める、毎日の実行と見直しの道具です。
事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。
次の大雪は、今年の冬にも来る。準備の締め切りは、初雪の前。
地震、断水、雪、港。四つの計画を別々に作る必要はありません。止まり方から考えれば、一つの表になります。
BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。