死者はゼロだった。それでも、1万5千棟が傷んだ。
鳥取県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。
2016年10月21日、午後2時7分。鳥取県中部を震源とするマグニチュード6.6の地震が、倉吉市・湯梨浜町・北栄町を震度6弱で揺らしました。
亡くなった方は、いませんでした。 それでも住家の被害は広い範囲に及び、その大半は一部損壊でした。
倉吉市役所では、窓ガラスなどの破損で一時、庁舎への立ち入りが禁止されました。倉吉市を中心に広い範囲で停電が発生し、断水も起きて、自衛隊の災害派遣が要請されました。
そして、建物の被害が限定的だった温泉地でも、事業は止まりました。県内の旅館・ホテルでは、宿泊予約のキャンセルが相次ぎました。
「建物が無事」と「事業が続く」は、別の問題です。
人、水、電気、道路、そして客足。どれか一つが欠けても、売上は止まります。あなたの会社の再開の条件は、決まっているでしょうか。
鳥取県のリスク
その断層は、知られていなかった
2016年の中部地震は、それまで知られていなかった断層で発生しました。気象庁によれば、地震の活動域は北北西から南南東に延びる長さ約10キロの領域です。2000年の鳥取県西部地震(マグニチュード7.3・震度6強)も、大きな地震が長く起きていなかった地域で発生しました。
鳥取県では、「主要な断層が知られていないこと」は、揺れないことを意味しませんでした。二度も。
同じ県で、三度
| 年 | 災害 | 規模・震度 | 何が起きたか |
|---|---|---|---|
| 1943年 | 鳥取地震 | M7.2・鳥取市で震度6(当時最大) | 県東部の市街地が広範囲で被害を受けた |
| 2000年 | 鳥取県西部地震 | M7.3・日野町/境港市で震度6強 | 境港・米子周辺で液状化と地盤流動。境港荷揚場で約1mの側方流動 |
| 2016年 | 鳥取県中部地震 | M6.6・倉吉市等で震度6弱 | 庁舎への立ち入り禁止・広い範囲の停電・断水・宿泊キャンセル |
2016年の中部地震では、住家の全壊18棟、半壊312棟、一部損壊は約1万5千棟。被害の約98%を一部損壊が占めました。
1943年の鳥取地震では、1,000人を超える方が亡くなりました。心より哀悼の意を表します。
東部・西部・中部と、震源を変えながら県内の全域が順番に揺れてきました。「まだ揺れていない前提で計画してよい場所」は、鳥取県にはありません。
液状化・地盤流動(西部)
西部地震では境港・米子周辺で液状化と地盤流動が起きました。境港荷揚場では約1メートルの側方流動と地盤沈下が生じ、電気・水道の供給が広い範囲で止まりました。
港湾・臨海部の倉庫、冷蔵、荷役は、揺れではなく「地盤」で止まりえます。 境港圏は島根県側も含む広域の経済圏として確認してください。
洪水 —— 県は「浸水継続時間」まで公表している
千代川・袋川・八東川の洪水浸水想定(計画規模1/100、流域2日雨量325ミリ)に加え、県は20河川で想定最大規模の浸水深、浸水継続時間、家屋倒壊等氾濫想定区域を公表しています。
県はこの浸水継続時間を「企業BCPにも有用」と明記しています。「何メートルか」だけでなく「何日浸かるか」で、休業日数・在庫・電気盤・復旧費が変わるからです。
豪雨・土砂・山間の孤立
2023年の台風7号では、鳥取市佐治町で24時間雨量が500ミリを超えました。佐治川ダムでは建設後はじめての緊急放流が行われ、国道482号、市道、橋、河川護岸、農地が同時に被災しています。
事業所が無傷でも、従業員・配送・燃料・修理業者が通る「最後の数キロ」が止まれば、事業は止まります。
津波・沿岸 —— 県の想定を、自社の住所で読む
鳥取県の地震・津波被害想定は、2018年12月に公表された調査報告書が最新のものです。県は13の地震を想定し、影響の大きい7つの断層について被害を予測しています。震度や液状化の分布は、県のジオマップで住所単位に確かめられます。
想定は読んで終わる文書ではなく、計画の前提です。自社の計画だけが、作った日のまま止まっていないでしょうか。
自社で確認すること: 事業所・倉庫・従業員宅・配送経路を、浸水深と浸水継続時間の両方で見る。港湾・臨海部は地盤も。
被害がなくても事業は止まる
建物より先に、客足が止まった
三朝温泉では建物の被害が限定的だったにもかかわらず、地震後に宿泊予約のキャンセルが相次ぎました。県は「がんばろうプロジェクト」で風評の払拭に取り組んでいます。
再開の判断は「建物の無事」だけでは決められません。 安全確認、水、電気、道路、予約対応、従業員の生活、そして正確な情報発信。これらをセットにした再開判断表が要ります。
庁舎に入れなくなった
倉吉市役所では、窓ガラスなどの破損で一時、庁舎への立ち入りが禁止されました。「本社・事務所に入れない」は、行政ですら起きたことです。
自社の決済、受発注、データ、電話は、どこで継続しますか。
道路が事業インフラだった
24時間で500ミリを超える雨により、道路・橋・河川・農地が同時に被災し、佐治川ダムは建設後はじめての緊急放流を行いました。
代替路は「地図上にある」だけでは使えません。 橋、法面、積載の制限、夜間の通行まで確認してください。警報が出てからではなく、雨量・河川・道路の情報で早めに配送と出勤を縮小する判断基準を、平時に決めておくことです。
港の地盤が動いた
境港荷揚場では約1メートルの側方流動が起きました。港湾機能の停止は、水産・冷蔵・食品・建材の、県境をまたぐ経済圏全体に波及します。
鳥取港と境港圏。 二つの物流圏それぞれで、代替港・代替倉庫・荷受け先を平時に一覧にしてください。
二つの読者へ
まだBCPがない会社へ
帝国データバンクの鳥取県版調査(2026年7月13日公表・調査は2026年5月18〜31日・県内53社が回答、対象131社)では、BCPを策定していない企業が43.4%でした。一方で、自然災害を想定リスクとする企業は72.0%です。リスクは分かっているのに、計画がありません。
これらは県内の回答53社の値であり、全県企業の推計ではありません。同じ調査で、鳥取の「策定意向あり」(策定済み・策定中・検討中の合計)は47.2%で、全国の50.5%を3.3ポイント下回りました。策定している企業は18.9%です。
2026年のTDB全国調査で、未策定の理由の上位は「スキル・ノウハウの不足」「人材の不足」「時間の不足」でした。
地震が来ないと思われていた場所で、鳥取は二度揺れました。「いつか作る」の「いつか」は、次の揺れより先に来るでしょうか。
BCPはあるが、動くか分からない会社へ
安否確認の手段の整備は80.0%と、備えの中で最も高い水準です(同じ県版調査)。しかし初動(安否確認)と、継続(代替拠点・代替物流・訓練)は別物です。中部地震で起きたのは「初動の後」の停止でした。 客足、役場の機能、断水。
県自身が「策定済みBCPの点検・診断」と「訓練・演習」を支援メニューにしています。形骸化が、県の認識する課題だということです。
さらに、県の被害想定は住所単位で震度や液状化を確かめられる形で公開されています。前提を確かめないまま、計画だけ止まっていてよいでしょうか。
その計画は、庁舎に入れなくなった日を想定していますか。安否確認の次のページに、何が書いてありますか。
地元の支援資源
とっとりBCPサポートセンターでは専門家に相談できます。県はBCP普及セミナー、短期集中型の策定ワークショップ、訓練・演習、策定済みBCPの点検・診断、県版の企業BCPモデル、補助制度、好事例集を用意しています。
事業継続力強化計画(ジギョケイ)の県内累計認定は293件です(令和8年7月末日時点)。これは国の制度の認定実績であり、県内のBCP策定件数や策定率ではありません。
BCP-AIで作った初版を持って、とっとりBCPサポートセンターや商工会・商工会議所に相談することもできます。
事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。
現行の想定をもとに、いま備える。
鳥取県の地震・津波被害想定は、すでに住所単位で読めます。想定が更新されたとき、開いて直せる計画を持っている会社と、これから作り始める会社の差は、想像より大きくなります。
BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。まずは今日から。