2011年3月11日。東京の震度は5強だった。それでも352万人が、家に帰れなかった。

東京都のBCP(事業継続計画)── 都内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。

2011年3月11日、東日本大震災。都内では最大で震度5強、建物被害は東北に比べれば限定的でした。しかし鉄道の多くが運行を停止し、道路は大渋滞、携帯電話はほぼつながらず、安否確認もできなかった。内閣府の推計では、都内で約352万人が、その日のうちに帰宅できませんでした。都は1,030の施設を開放し、翌12日の朝4時の時点で約9万4千人が一時受入施設で夜を明かしました。

あれは「本番」ではありませんでした。国の2025年の被害想定では、首都直下地震(都心南部直下・最悪ケース)の帰宅困難者は、東京圏(1都3県)で約840万人。さらに被災直後には、電気と通信も広い範囲で止まると想定されています。

建物が残っても、人が動けず、電気と通信が止まり、取引先も同じ状態なら、仕事は再開できません。東京の事業継続は、その前提から始まります。

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「東京は地震が危ない」では、何も決められない

東京都は、地震と水害のリスクを「都全体」ではなく住所単位で公開している自治体です。地震は5,192の町丁目ごとの危険度ランク、水害は住所で検索できる浸水リスクサービス。必要なのは首都直下への漠然とした危機感ではなく、自社、倉庫、従業員の通勤経路、主要取引先の住所で確かめることです。

そして東京では、自社の住所が安全でも足りません。都市全体が同時に止まる型のリスクが重なります。

カード1: 地震 —— 「町丁目」で見る

都は東京都震災対策条例に基づき、おおむね5年ごとに「地震に関する地域危険度測定調査」を実施しています。第9回(2022年9月公表)では、市街化区域の5,192町丁目ごとに、建物倒壊危険度、火災危険度、総合危険度を5段階で相対評価しています。

総合危険度の高い地域は、荒川・隅田川沿いに加え、品川区南西部、大田区中央部、中野区、杉並区東部などにも広がっています。「下町だけの問題」ではありません。

自社ビル、倉庫、主要な従業員の自宅、重要取引先の所在する町丁目を、区市町村別の一覧表で確認してください。なお、これは相対評価であり、特定の地震を想定した被害予測ではありません。都の被害想定とは別のものです。

(都の被害想定は2022年公表。都は見直しを進めており、新しい想定は2027年3月頃の公表予定です)

カード2: 都市停止 —— 「自社の住所」と無関係に来る

国の2025年の想定(都心南部直下・最悪ケース・東京圏=1都3県の合計)では、死者約1.8万人、全壊・焼失約40万棟。被災直後に最大約5割の建物が停電し、固定電話とネット回線の約5割に支障、上水道は約3割、下水道は約5%の地域で利用に支障が出ます。発災2週間後の避難者は約480万人、帰宅困難者は約840万人です。

「自社の町丁目はランク1だから大丈夫」は、成り立ちません。電気、通信、水、交通は、住所を選ばずに止まります。

カード3: 水害 —— 河川・内水・高潮は「同じ区内」でも違う

洪水と内水は都の浸水予想区域図と浸水リスク検索サービスで、高潮は都の高潮浸水想定区域図で、浸水範囲と深さを住所や地図から確認できます。同じ区、同じ駅の圏内でも、河川氾濫と内水と高潮では、リスクは別物です。

2019年の台風19号では、都内でも全壊27棟、半壊174棟の被害が出ました(2019年11月8日時点の速報値。調査中の情報を含みます)。多摩川沿いと多摩部を含め、都内も水害の直接被害地です。

地下階(機械室、受電設備、サーバー、在庫)と、拠点だけでなく倉庫、配送経路、仕入先の住所を確認してください。

カード4: 降灰 —— 富士山から離れた都心でも「移動と機械」が止まる

都の富士山降灰特設サイトのモデルケースでは、多摩地域をはじめ区部の大部分に2〜10cm程度以上の降灰、都内で約1.2億m³の除灰が必要と試算されています。風向、規模、継続時間で変わる、検討用の一例です。

降灰は、建物を壊さない代わりに、鉄道、道路、車両、空調、精密機器、物流、廃棄物処理、従業員の移動を広域に止めます。都心のサービス業、卸、本社機能にこそ関係する災害です。

ハザードマップ: 地震に関する地域危険度測定調査(第9回)・地域危険度一覧表/浸水予想区域図・浸水リスク検索サービス・高潮浸水想定区域図/Tokyo富士山降灰特設サイト

東京はもう、「無傷でも止まる」を経験している

移動が止まった日から、条例ができた。そして条例の先にBCPがある

2011年3月11日、都内の多くの職場で、建物、設備、在庫は無事でした。止まったのは鉄道と道路と電話。つまり従業員、顧客、配送の「移動と連絡」でした。多くの企業が、従業員を帰すか留めるかを、その場で初めて考えました。「むやみに移動を開始しない」という原則は当時ほとんど知られておらず、徒歩で帰宅する人が歩道にあふれました。

この経験は、制度になりました。都は2012年3月に東京都帰宅困難者対策条例を制定(2013年4月施行)。事業者には、施設の安全確認のうえで従業員を施設内に待機させる一斉帰宅抑制と、従業員の3日分の飲料水・食糧などの備蓄が、努力義務として定められています(第7条)。対象は大企業に限らず、中小企業と個人事業主を含みます。

東京で事業をすることは、「発災後3日間、従業員と会社をどう保つか」を条例レベルで問われているということです。BCPの初動部分は、東京ではすでに「書くべきこと」が決まっています。しかし条例が求めるのは初動の3日間であり、その先——取引先が2週間止まる、本社と連絡がつかない、通信が戻らない——は、条例の範囲外です。条例対応を済ませた会社ほど、次の一歩が近い。

3.11の夕方、かねて決めていた基準どおりに従業員の帰宅を止め、事務所に泊めた会社もあります。国の実態調査では、留めた企業の約2割が「3月11日以前から職場待機の方針を決めていた」と答えています。

取引網の「どこか」が止まれば、自社も止まる

東京都には民営事業所62万8,239、従業者959万2,059人が集積し、本社の決裁、金融・決済、法務、システム保守、物流管理、専門人材など、全国の企業が日常的に頼る機能が集まっています(都内に本社などを置く企業は45万3,145)。

首都直下では、この機能が同時に止まります。仕入先、販売先、物流、IT委託、決済、本社。どれか一つの停止が、無傷の自社を止めます。

その取引先が止まったら、何日後に自社のどの業務が止まるか。代替するには、誰の承認が必要か。年に一度の名簿確認ではなく、重要取引先ごとに、言葉にしてください。

「戻る時期がばらばら」への備え

上で挙げた国の想定のとおり、電気、通信、水、交通は、一斉には戻りません。BCPの本体は「復旧を待つ計画」ではなく、復旧の時期がばらばらでも、何を止め、誰に連絡し、どの仕事だけを残すかを、前もって決めておくことです。

東京で固有の論点は四つ。本社と連絡がつかないときの権限移譲(決裁上限、例外判断)。通信が断たれたときの、紙と電話での最低限の受発注。地下設備(受電、サーバー、在庫)の浸水確認。テナントビルの場合の、館側のルールとの整合。

二つの問いかけ

大企業の半分は持っている。取引先は、あなたの会社の分も想定し始めている

帝国データバンクの2026年調査(都内企業3,593社対象・1,849社回答)で、都内のBCP策定済みは26.0%。大企業の48.4%に対し、中小企業は19.9%。差は28.5ポイントで、取引網の裾野ほど備えが薄い状態です。前年の24.4%からは微増にとどまります。

26.0%は回答企業の状況であり、都内全企業の推計値ではありません。

東京の中小企業にとってBCPは、「自社のための備え」であると同時に、発注側、元請、大口顧客との継続取引の条件になりつつある文書です。大企業の約半分が策定済みという環境は、サプライチェーン全体での確認や要請が、中小に降りてくることを意味します。

策定していない理由は、全国調査の値で「スキル・ノウハウがない」42.2%、「人材を確保できない」33.5%、「時間を確保できない」28.1%。最初の一歩として、BCP-AIで初版を作るところから始められます。

備蓄は買った。連絡網も作った。取引先が止まる日のことは、書いてありますか

東京では、条例への対応(備蓄、待機、安否確認)を「済ませた」会社が相対的に多い。しかしそれは帰宅困難対策であって、BCPの一部にすぎません。取引先の停止、本社不通時の権限、通信断時の受発注、地下設備の浸水。「無傷でも止まる」型の備えは、条例の範囲外です。

その計画に、仕入先が2週間止まるケースは書いてありますか。決裁者と連絡がつかない場合の上限額は、決めてありますか。

事業継続力強化計画(ジギョケイ)の都内累計認定は、10,900件を超えています(うち連携型150件超)。国制度の利用実績であり、策定率ではありません。

東京には、「作る」と「動かす」の両方に支援がある

都の支援は「知る・つくる・動かす」の3段構え。東京都産業労働局と東京都中小企業振興公社が、普及啓発セミナー、BCP策定講座、策定コンサルティングを実施しています。策定だけでなく、実践(設備・備蓄)まで助成の対象にしているのが東京の特徴です。

BCP実践促進助成金(令和8年度)。公社のBCP策定支援事業の受講、または事業継続力強化計画の認定を受けて作成したBCPが対象です。令和8年度は、単独型は上限500万円(うちクラウド化150万円まで・下限10万円)、複数事業者の連携型は上限1,000万円。対象経費は、自家発電装置・蓄電池、安否確認システム、データバックアップ、転倒防止、従業員用備蓄品、止水板、耐震診断など。

帰宅困難者対策の実装支援。条例が求める3日分の備蓄について、都は目安(1人あたり水9L、食料9食、毛布1枚)をハンドブックで、簡易トイレの目安(1日5回・計15回分)を事業所向けの防災実践マニュアルで示しています。帰宅困難者を受け入れる民間の一時滞在施設には、都の備蓄品購入費用の補助もあります。

ジギョケイの現在地。都内の累計認定は10,900件超。認定は上記の助成金の入口要件の一つでもあり、「認定→助成→実装」の順路が、東京では制度としてつながっています。

BCP-AIで作った初版を持って、公社の策定講座やコンサルティング、商工会議所、よろず支援拠点に相談することもできます。

事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。

BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。作成した計画は、自社の実情と公的な防災情報に照らして確認し、必要に応じて修正してください。

次に電車が止まる日まで、何日あるかは誰にも分からない。最初の草案は今日作れます。

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