海のない栃木で、会社は水で止まった。2019年10月12日、栃木市の住家被害は8,000棟を超えた。

栃木県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。

2019年10月12日、令和元年東日本台風。栃木県を含む1都12県に大雨特別警報が出ました。栃木市では永野川の堤防が決壊し、巴波川が越水し、19か所で土砂崩れが起きています。浸水は推定978.65ヘクタール、住家の被害は8,000棟を超えました。佐野市の秋山川流域では、米とハウスイチゴに大きな被害が出ました。

被害は、河川沿いの建物だけでは終わりませんでした。従業員は避難し、道路は切れ、集荷の車は来ず、顧客は受け入れられず、行政は災害対応に追われました。

浸水しなかった会社も、止まりました。あなたの計画に、その章はありますか。

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栃木のリスク

1. 地震 —— 2026年8月、12年ぶりに書き換えられた想定

栃木県は2026年8月、2013年度の調査以来となる地震被害想定を全面的に更新して公表しました。能登半島地震などの教訓、耐震化の進展、少子高齢化といった社会の変化が反映されています。

最大ケースの栃木県庁直下地震(マグニチュード7.3、冬18時・最大風速ケース)では、死者3,692人、災害関連死739人から1,847人。建物の全壊・全焼は70,968棟、経済被害は8兆9,426億円とされています。ライフラインは、断水607,228人、停電151,040軒、通信不通112,509回線。避難者は最大365,543人、在宅避難556,117人です。実在する断層で最大の深谷断層帯・綾瀬川断層(関東平野北西縁断層帯)では死者374人、県北の関谷断層では死者166人が想定されています。

深谷断層帯・綾瀬川断層は、全壊・全焼10,228棟、断水141,440人、経済被害2兆8,968億円。県南に直結します。関谷断層は、全壊・全焼4,529棟、断水91,958人。急傾斜地の崩壊は、県内地域の9.7%で「発生可能性(大)」とされており、山地道路の寸断リスクに直結します。

想定シーンには、冬5時・夏12時・冬18時に加えて「GW昼間(集客期)」が新設されました。観光の来訪者が多い時期を、県自身が想定に組み込んだということです。市町別の総括表、液状化、デジタル地図の「とちまるマップ」まで公開されており、自社の住所で確認できます。

自社で確認すること: 県平均ではなく、自社の住所での震度と液状化。とちまるマップで引けます。

2. 備えれば、数字は動く

県が概要版で示した減災効果の試算があります。

対策 現状 100%にした場合
建物の耐震化 92% 揺れによる全壊が約5分の1(58,844→12,147棟)
感震ブレーカー 20.6% 焼失棟数が約2分の1

前回の調査からの耐震化の進展(71%→92%)だけでも、全壊はすでに約3割減りました。備えれば数字が動くことを、県自身が実証しています。

3. 河川氾濫・内水・土砂 —— 台風19号を「一度あった水害」で終わらせない

工場や倉庫の浸水は、電気室、冷凍冷蔵設備、サーバー、在庫、車両に及びます。従業員は避難し、出勤できません。河川沿いの道路、橋、物流拠点が止まり、行政・金融・修理の依頼が一時に集中します。

液状化の予測では「河川の流域沿い等の平野部や低地部において極めて高い地域がある」とされています。水害リスクの高い場所は、地震時の液状化リスクとも重なります。

秋山川流域の米とハウスイチゴの被害は、集荷、選果、冷蔵、加工、外食小売、運送、包装、雇用へと連鎖しました。生産よりも先に、集荷と衛生と販売が詰まります。

自社で確認すること: 浸水深と、電気室・サーバー・在庫の高さ。そして、集荷と出荷が止まったときの順番。

4. 那須岳・雪・山地道路 —— 県北の「行けない・届かない・帰れない」

那須岳には、住民だけでなく観光客と登山者の避難を目的とする避難計画があります。火山防災協議会には、栃木・福島両県の自治体、気象庁、道路管理者、鉄道、電力、通信、ロープウェイ、観光協会、医療・救助の関係者が参加しています。火山が「山の上だけの問題」ではないことを、協議会の構成そのものが示しています。

大雪、凍結、土砂、倒木による道路の停止は、都市部の水害とは別の項目です。在庫があっても、人が来られず、配送が来ず、来訪者が帰れません。

自社で確認すること: 警戒レベルが上がった時と大雪の時、来訪者・従業員・配送をどの順で判断するか。

被害がなくても、事業は止まる

栃木県の製造業は、製造品出荷額等8兆2,353億円(2020年)、事業所3,903、従業者195,131人。県経済の背骨は内陸の製造業です。

この構造では、自社の工場が無傷でも生産と納品は続きません。部材メーカー、金型や治具、検査、梱包、輸送、顧客の工場。このどれか一つが止まれば、そこで終わります。台風19号で実証済みです。浸水は栃木市や佐野市などの一部でしたが、道路・集荷・顧客の受入・行政対応の停止は県域に広がりました。

数字でも同じことが言えます。県庁直下地震の想定では、建物の全壊・全焼が約7.1万棟。これに対して断水は60万人を超え、停電は15万軒、通信不通は11万回線です。建物被害の桁を大きく超えて、水と電気と通信が止まります。倒れなかった工場も、用役・受発注・品質記録で止まります。

問いの形を変えてください。「自社が何日操業できるか」ではありません。顧客は受け取れるか。仕入先は出せるか。運べるか。品質を承認できるか。

観光・宿泊では、来訪者を安全に帰すことが最初の業務になります。警報、交通規制、予約の取消、従業員の安全、物資の補給。噴石が届かなくても、営業は止まります。

発災後の時間軸

時間帯 栃木での確認事項
発災直後 河川氾濫時は避難を最優先し、設備を安全に停止。那須岳周辺は来訪者を含む避難支援
0〜24時間 従業員の安否と出勤可否。浸水・積雪・土砂による道路状況。仕入先・顧客・物流の操業と受入可否
1〜3日 部材・原料・燃料・水・電力・通信の残存日数。優先する製品と顧客、代替経路、休業の範囲
4日目以降 設備・品質・衛生の確認。納品、検収、請求、入金。顧客への説明。保険と復旧支援

二つの読者へ

まだ作っていない会社へ —— 5社に4社が、まだ持っていない

帝国データバンクの2026年調査では、栃木県の中小企業のBCP策定率は27.2%です。台風19号を経験した県で、なお4社に3社近くが計画を持っていません。

同じ2026年調査で挙がった未策定の理由は、スキル・人手・時間の確保が難しいこと。そして「効果を疑問視する」声もありました。もっともな感覚だと思います。最初の一歩として、BCP-AIで初版を作るところから始められます。

2026年8月に被害想定が12年ぶりに書き換えられた今は、止まった検討を再開する自然な起点になります。

効果への疑問には、県の試算が答えになります。耐震化100%なら、揺れによる全壊は約5分の1。前回調査からの耐震化の進展だけで、全壊はすでに約3割減りました。備えは数字を動かします。 BCPも同じで、「何を優先するか」を1枚決めるだけで、発災後の初動が変わります。

作ったきりになっている会社へ —— その計画は、2026年8月より前に書かれていませんか

県の被害想定は12年ぶりに全面更新されました。震度分布、液状化、市町別の被害、想定シーン(GW昼間が加わりました)。計画の前提となる数値が、古くなっている可能性があります。

台風19号でテストしてみてください。計画に「自社が浸水しない場合」の章はありますか。道路、集荷、顧客の受入、従業員の出勤。2019年に実際に起きた止まり方で、机上訓練を1時間やってみると分かります。

県北の事業者には、もう一つの問いがあります。噴火警戒レベルが上がった夜、宿泊客に誰が説明しますか。名前で答えられなければ、計画は動きません。

地域の相談先・支援制度

栃木県のBCP策定支援(専門家派遣)は、県が事業者に専門家を派遣し、事業の特性に合わせた策定を支援するものです。

事業継続力強化計画(ジギョケイ)は国の認定制度で、栃木県の累計認定は1,100件を超えています(令和8年7月末時点)。防災・減災投資の税制措置、金融支援、補助金審査上の加点につながります。

商工会議所・商工会は、県内各地にある身近な伴走先です。

とちまるマップでは、新しい想定の震度と液状化をデジタル地図で確認できます。自社の住所で引いてみてください。

BCP-AIで作った初版を持って、県の専門家派遣や商工会議所・商工会に相談することもできます。

事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。

浸水しなかった会社が止まった理由を、あなたの会社の計画に書いておく。

BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。作成した計画は、自社の実情と公的な防災情報に照らして確認し、必要に応じて修正してください。

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