「台風のしのぎ方は知っている」。その夏、コンビニ195店舗が閉まり、空も海も止まった。

沖縄県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。

2023年7月31日から8月上旬にかけて、台風6号は異例の進路で沖縄本島地方に2度接近しました。長いところで2日以上が暴風域に入り、那覇でも猛烈な風を観測。停電は最大で約21万8,000戸に達しました(8月2日7時30分時点・沖縄電力管内)。

那覇空港は2日連続で閉館し、バスもモノレールも止まりました。スーパーは臨時休業し、県内のコンビニ3社・約195店舗が休業しています。航空便と船便は7月31日から欠航が続き、8月上旬の観光ピークに多くの移動へ影響が出ました。多くの観光客が延泊や足止めとなっています。

沖縄の会社は台風に慣れています。固定も、養生も、休業の判断も、経験でできます。

しかし2023年の1週間が示したのは、「慣れ」でしのげる台風と、しのげない台風があるということでした。 そして「慣れ」は社長や番頭の頭の中にしかなく、会社の仕組みとしては残っていない、ということも。

経験を、文書にする。それだけで、次の台風の前日にやること・止めること・知らせる相手が、誰にでも分かる会社になります。

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沖縄県のリスク

1. 台風 —— 「復旧の計画」ではなく「接近前の計画」が要る県

県の港湾BCP(運天港・金武湾港・中城湾港、運天港と本部港の相互連携BCP)は、地震・津波に加えて台風を想定災害に含め、接近前の予防対応を組み込んでいます。全国的には発災後の復旧型が主流です。行政ですら「台風は事前対応の勝負」と定義しているということです。

2023年の台風6号では、1度目の接近(暴風)と2度目の接近(大雨・本島北部で線状降水帯)で、被害の質が変わりました。8月上旬の県内降水量は平年の約5倍で、統計を開始した1946年以降で最多。日照時間は最少でした。

この台風による人的被害は、死者1名・負傷者69名です(2023年8月10日16時時点)。亡くなられた方々に、心より哀悼の意を表します。

全国標準のひな形は、発災後の復旧計画から書き始めます。沖縄では、順序が逆です。 前日までに何を固定し、何を止め、誰に知らせるか。この時系列の行動表が、沖縄のBCPの本体になります。

自社で確認すること: 台風接近の72時間前・48時間前・24時間前に、それぞれ誰が何を決めるか。

2. 地震・津波 —— 「揺れなかったのに、津波が来た」県

1771年(明和8年)、石垣島の近海でマグニチュード7.4の地震が起きました。揺れによる被害は、ほとんど記録されていません。それでも大津波が八重山・宮古諸島を襲いました。 遡上高は石垣島の宮良・白保付近で数十メートルに達したとされます。

ここで語るべきは規模ではなく、構造です。「揺れの小ささ」は「津波の小ささ」を意味しません。 津波堆積物などの調査からは、同規模の津波が数百年の間隔で繰り返し起きた可能性も指摘されています。

県は最大クラスの津波を対象に、本島・宮古・八重山を含む市町村別の津波浸水想定を公表しています。

この県の歴史上最大の災害は、揺れではなく、揺れのあとに来ました。

自社で確認すること: 沿岸の事業所・倉庫・港湾・観光施設を、揺れの体感ではなく浸水想定図で確認する。

3. 離島性 —— 「道路が復旧すれば戻る」県ではない

本島も離島も、食料・燃料・生活物資・建設資材・修理の人員・観光客を、船便と航空便に依存しています。港と空港は輸送インフラではなく、事業継続の前提条件です。県は県管理12空港の業務継続計画(A2-BCP)も公表しています。

台風6号では航空便・船便が7月31日から欠航し、再開未定の期間が続きました。郵便やゆうパックにも遅延が生じています。港が再開しても、荷役、受入、保管、島内配送、顧客の受取のどこかが詰まれば、商品は届きません。

自社で確認すること: 品目別の在庫日数。燃料・水・保冷の継続時間。代替の港と便。島内配送の維持。

4. ライフライン —— 「復旧→再停止」が沖縄の台風の型

台風6号の停電は、1度目のピークから復旧が進んだあと、2度目の接近で再び数万戸規模まで増加しました。全復旧は、再接近のピークから数日後です。

冷蔵・冷凍・決済・予約・衛生・通信が同時に使えなくなります。食品・飲食・宿泊・小売は、温度と衛生と決済の3点で、在庫と売上を同時に失います。

自社で確認すること: 停電が「復旧してからまた止まる」前提で、冷蔵と決済の判断基準を決めてあるか。

自社が無傷でも止まる

AIで生成したイメージ画像。白い街並みと貨物船が着く港の上空からの眺め。
AIで生成したイメージ画像です(実在の風景ではありません)。

台風6号のあと、県内の経済活動は約1週間止まりました。沖縄の事業停止は「損壊」ではなく「到達不能」で起きます。

自社の状態 それでも止まった理由
店舗は無傷 停電で冷蔵と決済が止まり、商品を廃棄。仕入も船便の欠航で入らない
ホテルは無傷 航空便の欠航で新規の客が来ない一方、帰れない客の延泊対応と食材の確保に追われた
工場・工事現場は無傷 資材と部材が港で止まり、協力会社の人員も移動できない
従業員も無事 バスとモノレールの停止と暴風で出勤できない。安否と出勤可否の確認手段が電話しかなく、回らない

「客が来ない」と「客が帰れない」が同時に起きるのは、観光県・島嶼県だけの構造です。 停電と断水による事業の停止と、予約のキャンセルによる利益の喪失が、並んで発生します。

建物の保険は「損壊」に効きます。BCPは「無傷なのに止まる1週間」に効きます。沖縄で必要なのは、後者です。

二つの読者へ

まだ計画がない会社へ

帝国データバンク沖縄支店の調査では、県内のBCP策定率は全国平均を大きく下回る水準が続いています(2021年時点)。

2026年の全国調査では、沖縄の「策定意向あり」(策定済み・策定中・検討中の合計)は48.0%で、全国の50.5%を下回っています。時点・対象・設問が異なるため、この2つは単純に比較できません。 ただし、意向はあるのに計画になっていない層が厚いことはうかがえます。なお九州・沖縄地域の2026年の策定済み率17.1%は地域の計であり、沖縄単独の値ではありません。これらの数値は回答企業群の値であり、県内全事業所の推計ではありません。

「台風は毎年しのいでいる」——その経験こそが、BCPの素材です。沖縄はゼロから書く県ではありません。すでにやっている台風前のルーティンを文書にするだけで初版ができる、とりわけ「書きやすい」県です。

事業継続力強化計画(ジギョケイ)の県内累計認定は、710件を超えています(令和8年7月末時点)。認定を受けると、防災・減災投資の税制措置、金融支援、補助金審査上の加点などがあります。

完璧な計画から始める必要はありません。「台風接近の72時間前からの行動表」1枚からで十分です。

計画はあるが、動くか不安な会社へ

台風6号型で、3つ試してみてください。

  1. 停電が「復旧してから再び止まった」場合の、冷蔵と決済の判断基準はありますか。
  2. 船便と航空便が1週間止まった場合の、品目別の在庫日数を把握していますか。
  3. 観光客や来訪者の「滞留」——帰れない客への対応は、計画に入っていますか。

沖縄県は、港湾BCP、空港のA2-BCP、観光危機管理計画を整備しています。自社の計画が、港・空港・県の再開判断や情報発信とどうつながるかを一度確認しておくと、計画の実効性が大きく上がります。

沖縄県の支援機関・制度

窓口 内容
沖縄総合事務局 経済産業部 中小企業課 沖縄県の事業継続力強化計画の担当窓口(他県の経済産業局にあたります)。申請は電子申請システム(GビズID が必要)
沖縄振興開発金融公庫 認定事業者向けの低利融資と、社会環境対応施設整備資金(BCP融資)。耐震・消防・データバックアップ用サーバ等の防災設備資金が対象
沖縄県よろず支援拠点(県産業振興公社) 経営相談の入口。無料で相談できます
商工会議所(那覇・沖縄・宮古島・石垣ほか)・県商工会連合会 策定の相談・支援の窓口
沖縄県・OCVB(観光危機管理) 県は観光危機管理の基本計画と実行計画を策定し、現在は「第2次沖縄県観光危機管理計画」に一本化しています。観光事業者向けの研修やマニュアル類も公開されています
県土木建築部(港湾課・空港課) 港湾BCP・空港A2-BCP の公表資料。自社の計画との接続を確認するのに使えます
沖縄県防災情報ポータル「ハイサイ!防災で~びる」 台風・津波・気象・避難情報の一元窓口

県には、観光客と物流を守るための計画がすでにあります。あなたの会社の計画をそこにつなげば、備えは一人で抱えるものではなくなります。

事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。

AIで生成したイメージ画像。貯水タンクと室外機が並ぶ建物の搬入口。
AIで生成したイメージ画像です(実在の風景ではありません)。

まず、自社の「止まり方」を1枚にする。

建物・仕入・物流・人・電気。どこが止まると事業が止まるのか。最初のゴールは「次の台風の72時間前にやることリスト」で十分です。

BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。

あなたの会社には、もう台風対応の「腕」があります。足りないのは、それを誰でも使える「紙」にすることだけです。

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