津波の来ない県で、会社は何で止まるのか。

奈良県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。

奈良の事業を止めるのは、南の道路、北の断層、そして県境の向こう側。

紀伊半島大水害から15年。犠牲になられた方々に哀悼の意を表し、いまも続く復旧・復興の歩みに敬意を込めて、このページを作りました。

奈良県は海に面していません。津波も高潮も来ません。全国で「災害の少ない県」と言われることもあります。

それでも、奈良の会社は止まります。

15年前の秋、台風12号の豪雨で県南部の国道168号は折立橋が落ち、応急復旧で通行が確保されたのは約2か月後でした。建物が無事だった事業所も、人が来られず、モノが届かず、営業できませんでした。

県北部の直下には、国が「発生可能性が高いグループ」と評価する活断層が走っています。そして奈良で働く人の4人に1人以上は、県境の向こうに通っています。大阪が止まれば、奈良も止まります。

共通するのは、事業が「自社の建物の外」で止まることです。BCPは、そのための計画です。

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奈良のリスク

1. 南部 —— 「道路が止まる」災害

2011年9月の台風12号で、上北山村の総雨量は1,808.5ミリ、十津川村は1,358.5ミリを記録しました。県内では住家の全壊49棟、半壊71棟の被害が出ています。

この災害では、県内で死者14人・行方不明10人の人的被害が生じました。1982年の大和川大水害では県内で16人が亡くなり、または行方不明になっています。また県の第2次地震被害想定(2004年)では、奈良盆地東縁断層帯の地震(朝5時発生の想定)で死者は約5,200人とされています。亡くなられた方々に、心より哀悼の意を表します。

「深層崩壊」と呼ばれる大規模な斜面崩壊が県南部で多発しました。県内の大規模斜面崩壊16か所で崩壊した土砂が川をせき止める河道閉塞が起き、うち4か所は全閉状態になっています。土砂災害防止法にもとづく国の緊急調査が、初めて適用された災害でもありました。

国道168号は折立橋の落橋などで不通となり、十津川道路の一部が9月5日に開通したあとも、折立橋の応急復旧で通行が確保されたのは10月30日でした。

この道は、大災害のときだけ止まるわけではありません。災害の前の2008〜2012年度にも、十津川村平谷と小原の間で5年間に延べ116日(約1,600時間)の全面通行止めが発生していました。大雨のたびに止まりうる道です。

復旧の遅れは需要にも及びます。十津川村では災害のあと、観光客の入込が激減しました。

自社で確認すること: 主要な仕入れ、配送、通勤の経路が国道168号など県南部の幹線に依存していないか。依存しているなら、何日止まると何が止まるか。

2. 盆地部 —— 直下の活断層

奈良盆地の東縁には、国が「今後30年の間に地震が発生する可能性が、我が国の主な活断層の中では高いグループ(Sランク)」と評価する奈良盆地東縁断層帯(国の長期評価では「京都盆地-奈良盆地断層帯 南部区間」)が走っています。京都府城陽市の南部から奈良市・天理市を通り桜井市まで、ほぼ南北に約35キロ。マグニチュード7.4程度で、東側が西側に対して4メートル程度隆起する逆断層です(地震調査研究推進本部・長期評価 2026年8月一部改訂)。

文部科学省は「地震の規模が大きく、発生確率が高い断層」として、重点的な調査観測を実施しています。内閣府も近畿圏の直下地震対策の応急対策検討の対象に位置づけています。

県の第2次地震被害想定(2004年・朝5時発生の想定)では最大震度7。建物の全半壊は約20万棟、避難者は約43万人(1週間後)、断水は約43万世帯とされ、県内でもっとも被害の大きいケースです。奈良市・大和郡山市・天理市・橿原市では全半壊が各1万棟を超えます。液状化の危険度は奈良盆地の中心部で高くなっています。

ほかに生駒断層帯(マグニチュード7.5程度・Zランク)、中央構造線断層帯の五条谷区間(同7.3程度)があります。五条谷区間は発生確率が「不明」とされるXランクで、すぐに地震が起きることが否定できない区分です。県の想定は、8つの内陸型断層と南海トラフを対象としています。

自社で確認すること: 事業所、従業員の自宅、主要取引先の所在地が、断層帯の直上や近傍と重なっていないか。住所単位で見たことがありますか。

3. 盆地部 —— 大和川は「氾濫したことのある川」

1982年の大和川大水害では、大和川(初瀬川)の決壊と佐保川の氾濫で約600世帯が孤立しました。王寺駅の周辺と田原本町が浸水し、王寺駅の電車基地も水に浸かりました。

2017年の台風21号でも、県内で床上浸水2棟・床下浸水82棟の被害が出ました。

自社で確認すること: 大和川水系沿いと盆地部の事業所は、浸水深と、受変電設備・在庫の高さを住所ごとに確認する。

4. 全県 —— 「災害の少ない県」という統計の読み方

内陸で津波・高潮がないのは事実です。しかしそれは「自社の建物が壊れにくい」という一面にすぎません。道路、鉄道、取引先、通勤、物流、決済を通じて、近畿圏の災害は即日、奈良県内の事業に波及します。

会社が無傷でも、事業は止まる

従業員が「県境の向こう」にいる

奈良で働く人の4人に1人以上は、大阪や京都など県外に通っています。逆に、県内企業の従業員や顧客にも、大阪・京都から来る人が多くいます。

大阪で大規模な地震、暴風、停電が起きれば、県内の事業所が無傷でも「社員が帰ってこられない」「取引先の担当者が出社していない」「入金と検収が止まる」が同じ日に起こり得ます。近畿圏の鉄道が広域で止まった日を、奈良はすでに何度か経験しています。

商流・物流・決済が近畿圏に埋め込まれている

県外の仕入先、物流拠点、決済が止まったとき、品目別に「何日で、どの仕事から」止まるかを、平時に一覧にしておいてください。近畿圏の取引先の所在地と、品目別の在庫日数。この組み合わせが、そのまま設問になります。

南部は「到達不能」、観光は「風評」

紀伊半島大水害では、道路が復旧するまでのあいだ、通常の物流も観光も来訪サービスも戻りませんでした。災害区域の外にある宿でも、予約は消えます。

世界遺産と社寺観光を抱える県として、「営業しています」を正確に発信する準備——予約の変更、交通情報、資金繰り——それ自体がBCPの一部です。

建物の無事と、事業の継続は別の問題です。

二つの読者へ

まだ作っていない会社へ

TDBの調査が示す課題は、意識ではありません。「スキル」「人材」「時間」の不足という、構造的な課題が導入を阻んでいます。

最初の一歩として、BCP-AIで初版を作るところから始められます。

帝国データバンクの2026年の奈良県版調査では、県内の回答企業の策定率は19.0%です(回答企業群の値で、県内全企業の推計ではありません)。裏返せば、取引先の8割強も、まだ持っていません。先に持った会社が、災害後に選ばれやすい会社になります。

作ったが動かない会社へ

その計画に、次の3つは書いてありますか。

  1. 「国道168号が2か月通れない」
  2. 「大阪の取引先が止まる日」
  3. 「断層帯の直上に取引先がある」

訓練の切り口は4つです。経営者の不在、出勤の不能、道路の寸断、取引先の停止。この4想定で、机上訓練を1時間やってみてください。

奈良の相談先・支援制度

奈良県「企業向け事業継続計画(BCP)の策定」ページは、入門診断(チェックシート)→ 中小企業庁の指針の様式 → 事業継続力強化計画、という段階の導線を案内しています。J-SHIS と重ねるハザードマップで、住所別のリスク確認も同じページからできます。

県のBCP策定支援セミナー(普及啓発セミナーと策定体験ワークショップ)は開催実績があります。開催の時期と形式は年度により異なります。

奈良商工会議所は、動画などでBCPの認知向上に取り組んでおり、超簡易版のBCPシートや中小機構「BCPはじめの一歩」への導線を案内しています。

商工会・商工会議所の事業継続力強化支援計画(県の認定)の網に加えて、国の事業継続力強化計画の県内累計認定は980件を超えています(令和8年7月末時点)。

BCP-AIで作った初版を持って、商工会議所・商工会や県のセミナーに相談することもできます。県の導線(入門診断 → 様式の記入)の手前に置く使い方です。

事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。

津波は来ない県です。それでも止まる理由は、もう分かっています。

BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。作成した計画は、自社の実情と公的な防災情報に照らして確認し、必要に応じて修正してください。

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