2019年10月12日夜。多摩川は、氾濫しなかった。それでも武蔵小杉は水没した。

神奈川県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。

2019年10月12日、台風19号。多摩川の水位は上がりましたが、川崎側で起きたのは堤防の決壊ではなく、内水氾濫でした。

それでも武蔵小杉駅の周辺は冠水しました。 下水道を、水が逆流したのです(内水氾濫)。

47階建てのタワーマンションでは、地下3階の電気設備が水没して全館が停電し、エレベーターも給水も止まりました。横須賀線は、12日から13日にかけて全線で運転を見合わせました。

1階への浸水は防ぎました。堤防も守りました。それでも止まりました。

神奈川の災害は、「川からの距離」でも「建物の新しさ」でも測れません。

あなたの会社の地下、排水口、取水設備、電気室は、どこにありますか。

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神奈川のリスク全体像

神奈川県は、一つの災害像では語れません。 県の被害想定は、6つの地震を並べています。

2025年3月に公表された想定は、都心南部直下、三浦半島断層群、神奈川県西部、東海、南海トラフ巨大、大正型関東の6つ。ここに津波・水害・火山が重なります。

1. 都心南部直下地震 —— 県の想定

全壊42,920棟、断水人口263.5万人、停電25.5万軒、帰宅困難者106万人。港湾の被害は24バース、直接の経済被害は7兆1,240億円とされています。

帰宅困難者106万人は「交通の話」ではありません。 従業員が帰れず、翌日も出社できず、来訪者が滞留したままになる、という意味です。

2. 大正型関東地震 —— 桁が変わる

全壊303,300棟、断水人口518.4万人、停電195.2万軒。直接の経済被害は25兆9,280億円。

都心南部直下と大正型関東では、被害の桁が違います。「地震を1つ想定した計画」は、どちらを想定したのかで意味が変わります。

この大正型関東地震では19,780人の方が亡くなるとされています。南海トラフ巨大地震の県内想定は790人で、そのうち780人が津波によるものです。

3. 液状化と津波 —— 「西日本の災害」ではない

川崎・横浜の沿岸埋立地は、県の想定で液状化の危険度が「極めて高い」とされています。

そして津波の到達は、大正型関東地震で相模湾に5〜10分、神奈川県西部地震で5〜30分とされています。南海トラフ巨大地震では相模湾内に30〜40分ですが、県内想定死者の大半は津波によるものです。「南海トラフは西日本の災害」は、神奈川では成り立ちません。

4. 三浦半島断層群 —— 海溝型とは別の備え

県の想定では、三浦半島断層群の地震はMw7.0、横須賀三浦地域で震度6強です。横須賀市では、局所的に震度7になる地域もあるとされています。

なお相模トラフ系(大正型関東・都心南部直下)は海溝型・広域被害、三浦半島断層群は活断層型・局所直下です。同じ枠で考えないでください。

県内の主要活断層帯(国の長期評価)

地震調査研究推進本部は、主要活断層帯で起こる地震の発生確率を相対的な高さで区分しています。県内では、次の活動区間が最も高い区分(Sランク)にあります(2026年1月1日算定)。

この区分は、発生時期や個々の事業所の被害を予測するものではありません。国の評価の区分は、被害の大きさを意味しません。区分が低い断層でも地震は起こり、国は「ランク分けに関わらず、どの場所でも強い揺れに見舞われるおそれがある」と注記しています。自社の所在地と断層帯の位置関係は、県の被害想定と国のハザードマップで確かめてください。

断層の評価は定性表現で示しています。国(地震調査研究推進本部)は今後30年以内の地震発生確率が3%以上を「Sランク」と表記し、地震後経過率(前回の活動からの経過時間を平均活動間隔で割った値)が0.7以上の活断層には、ランクに「*」を付記しています。同じ表に載る富士川河口断層帯は静岡県・山梨県に位置するため除いています。出典: 地震調査研究推進本部「神奈川県の地震活動の特徴」(2026年1月1日算定)/同「今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧」(令和8年1月14日現在)注3

5. 富士山の降灰

富士山が大規模に噴火した場合、首都圏には広く降灰が想定されています。降灰の厚さが1mm以上で、車線などが見えにくくなり、速度が落ちるとされています。

地域別の止まり方

神奈川は、一つの県ではありません。 同じ県内で、止まり方が三つに分かれます。自社がどれに当たるかで、最初に書くべき1枚が変わります。

臨海・都市部 —— 港と燃料と電車が、同時に来る

港と燃料と電車。どれか一つが3日止まったら、どの業務が止まりますか。

横浜・川崎・京浜臨海部では、液状化、危険物、港湾の停止、帰宅困難者106万人が同時に来ます。

自社が無傷でも、仕入・燃料・従業員のどれかが臨海部を通っていれば止まります。 港が再開しても、荷役・保管・受入・検収が詰まれば、自社に届くのはさらに先です。

自社で確認すること: 主要品目の港と倉庫、代替の在庫日数。燃料の供給会社と備蓄。出社が必須の業務の絞り込み。

湘南・三浦・県西 —— 避難が、営業再開より先に来る

津波警報の10分間、店内のお客様を誰がどこへ誘導しますか。

相模湾の津波は、大正型関東地震で5〜10分とされています。鎌倉・横須賀・小田原・箱根では、観光客と来訪者の滞留と避難が、営業の再開より先に来ます。

県西は土砂と道路の閉塞で孤立し得ます。三浦半島の直下には、国の長期評価で最も高い区分(Sランク)とされた活断層(三浦半島断層群)が走っています。この地域では、「まず避難」を業務の判断より上に置く条件を、あらかじめ文章にしておく必要があります。

自社で確認すること: 避難を業務より優先する条件の明文化。来訪者の名簿と誘導先。道路が寸断されたときの物流の代替。

県内全域 —— 灰と、川から遠い浸水

灰が2ミリ積もった朝、配送車は走れますか。

富士山の降灰は首都圏に広く及び、厚さ1mm以上で車線などが見えにくくなり、速度が落ちるとされています。降灰は「富士山に近い地域」の問題ではありません。

そして台風による河川と内水の氾濫は、「川から遠い」事業所も襲います。 武蔵小杉で起きたのは、堤防が守ったうえでの浸水でした。水は川からではなく、下水道を逆流して来ています。

自社で確認すること: 浸水の経路別の止水判断(取水口・排水口・マンホール・地下の搬入口)。降灰時の通勤と配送の切替。夜間と休日の意思決定者。

無傷でも止まる

堤防は守った。それでも、その街は止まった

2019年の台風19号で、県内では全壊53棟、床上浸水966棟、崖くずれ189件の被害が出ました。床上浸水のうち873棟は川崎市です(県の速報値)。この災害で亡くなられた方々に、心より哀悼の意を表します。

武蔵小杉で起きたことを、経路で分解してみます。

電気室が地下にあった。 雨水枡を経由して水が貯水槽へ流れ込み、地下3階の電気設備が水没して全館が停電しました。建物の階数も築年も、この経路には関係ありません。

駅が止まった。 横須賀線は12日10時から13日15時まで全線で運転を見合わせました。従業員は出社できず、来訪者は来られません。

そして、どちらも「浸水想定区域の内側かどうか」だけでは読み切れません。 内水氾濫は、雨量と排水能力と地形の関係で起きます。

BCPの問いは、「川からどれだけ離れているか」ではありません。「水がどこから入るか」です。

二つの読者へ

AIで生成したイメージ画像。岸壁沿いに延びる配管と貯蔵タンクと停泊船。
AIで生成したイメージ画像です(実在の風景ではありません)。

まだ策定していない会社へ

帝国データバンク横浜支店の調査(2026年5月調査・回答618社)では、神奈川の策定率は18.4%、未策定は40.5%です。全国では、大企業の39.9%に対し、中小企業は18.3%です。

この値は、調査に回答した県内企業の集計です。県内の全企業の推計ではありません。

未策定の理由は、スキル・時間・人材の不足でした。意識の問題ではなく、構造的な課題です。 最初の一歩として、BCP-AIで初版を作るところから始められます。

取引先から「BCPはありますか」と聞かれる日は、災害より先に来ます。

計画はあるが動かない会社へ

その計画書に、「多摩川が氾濫しない場合の浸水」は書いてありますか。

前提が2つ動いています。2019年の実災害と、2025年の県の想定改定。前提が動いた計画は、点検が必要です。

全国では、策定済み・策定中・検討中を合わせた「策定意向あり」が50.5%です。御社の計画は、このうちどれに当たりますか。

神奈川の支援リソース

リソース 内容
神奈川産業振興センター(KIP)「BCP作成等支援専門家派遣事業」 中小企業のBCPと事業継続力強化計画の策定に、専門家を派遣する制度です
神奈川県「BCP策定支援融資」 BCPを策定し対策を実施した企業や、事業継続力強化計画(単独・連携)の認定企業に向けた融資です。信用保証料の割引の仕組みがあります。条件は年度により異なります
「BCP作成のすすめ(かながわ版)」 県が作成したひな形と記載例集です
事業継続力強化計画 国(中小企業庁)の認定制度。神奈川県の累計認定は4,600件を超えています(令和8年8月末時点)
市レベルのセミナー・支援 横浜市などが、事業継続力強化計画の策定支援セミナーを定期的に開催しています(県との共催の実績もあります)

事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。

AIで生成したイメージ画像。高層ビルを背にした建物の地下設備への搬入口。
AIで生成したイメージ画像です(実在の風景ではありません)。

多摩川が氾濫しなくても、止まった街があります。あなたの会社の止まり方を、今日確認しませんか。

BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。

臨海か、湘南・三浦・県西か、それとも県内全域の複合か。地域によって、最初に書く1枚は違います。

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