2025年8月8日、霧島に線状降水帯。雨が上がっても、水道と国道は戻らなかった。
鹿児島県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。
2025年8月8日の未明から明け方、鹿児島県では線状降水帯が繰り返し発生しました。霧島市では1時間降水量が100ミリ、24時間降水量が500ミリを超え、観測史上1位を更新。気象庁は同じ日の明け方、霧島市に大雨特別警報を発表しました。県は災害対策本部を設置し、薩摩川内市、曽於市、霧島市、姶良市に災害救助法が適用されました。床上・床下浸水は、霧島と姶良を中心に、床上746棟・床下610棟にのぼりました(県の最終報・8月26日時点)。霧島市では市内各地で水道管が破損して断水が続き、解消は8月13日。雨が上がってから、まだ5日先でした。
そして道路。姶良市加治木の国道10号・網掛橋は、1日約2万5,000台が通る幹線ですが、通行止めは約3カ月に及びました。JR肥薩線も吉松〜隼人間が不通となり、運行再開は2026年7月12日でした。建物が浸からなかった会社でも、水が出ず、従業員が来られず、トラックが迂回し、納品が遅れた。
鹿児島の事業継続で問われるのは、「被災するかどうか」ではありません。周りが止まったとき、自社の仕事をどう続けるかです。
「鹿児島は桜島」では、何も決められない
鹿児島県は、薩摩・大隅の二つの半島と200余りの島々が、南北およそ600kmに広がっています。活火山は11。毎年の台風と豪雨、最大クラスの津波想定、そして本土と島を結ぶ船と空の便。リスクの種類も止まり方も、事業所の住所と輸送経路によってまったく違います。必要なのは「鹿児島は災害が多い」という漠然とした認識ではなく、自社、倉庫、従業員の自宅、港、取引先の住所で確かめることです。
カード1: 火山噴火・降灰 —— 「避難」ではなく「操業条件」
県内の活火山は11。桜島、霧島山、薩摩硫黄島、口永良部島、諏訪之瀬島の5火山は、24時間体制で監視されています。
2022年7月24日、桜島で爆発が発生し、大きな噴石が火口から約2.5kmに達しました。気象庁は午後8時50分、噴火警戒レベルを「5(避難)」に引き上げ、鹿児島市は有村町・古里町の一部に避難指示を出しました。レベル3への引き下げは7月27日午後8時でした。
日常の降灰は、避難とは別に、通勤、配送、屋外作業、空調の吸気、車両、水、衛生、来訪を制限します。風向と降灰量で「どの事業所が、何を止めるか」が変わります。
自社で確認すること: 事業所、従業員宅、顧客の「降灰時に何が止まるか」を、風向別に一覧にする。
カード2: 台風・豪雨・土砂 —— 2025年8月が示した「面の停止」
梅雨から夏にかけて降水が集中し、毎年のように台風、局地的な大雨、土砂災害の影響を受けます。2025年8月の大雨では、内閣府のとりまとめ(8月18日時点)で、死者1人、負傷者5人、住家の全壊2棟、床上浸水376棟、床下浸水432棟。亡くなられた方に、心より哀悼の意を表します。特別警報、5日を超える断水、幹線国道の長期寸断が、同じ雨で重なりました。
2026年9月の台風第24号及び前線による大雨により、屋久島町に災害救助法が適用されました。
2026年9月の台風第24号及び前線による大雨で被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
自社で確認すること: 通勤、配送、仕入れの主経路と代替経路。断水時の必要水量。停電時の冷蔵と非常電源。営業停止の基準。
カード3: 地震・津波 —— 「到達時間」で見る
県は、最大クラスの津波をもたらす12の地震モデルを重ねた浸水想定を公表しています。県内の沿岸を209に分割し、最高津波水位と「津波の水位が20cmに達する時間」を図面ごとに示しています。これは次の地震の予測ではなく、自社の住所がいつまでに避難判断を要するかを確認する基礎情報です。
自社で確認すること: 沿岸の事業所、倉庫、漁港、従業員宅の浸水深と到達時間。避難後の連絡手段。危険物と冷蔵設備の安全停止手順。
カード4: 離島・広域交通遮断 —— 船と空が生命線
南北約600km、200余りの島々。船便、航空便、港、空港のどれか一つが止まるだけで、飼料、燃料、医薬品、原材料、生活物資、出荷が滞ります。台風の時期のフェリーと航空便の欠航は、毎年発生する前提です。「輸送が数日止まっても持つ在庫、代替経路、顧客連絡」を、平時に決めておく必要があります。
2026年8月、台風18号が奄美地方を直撃しました。天城では最大瞬間風速54.5メートルを観測し、停電と欠航が広い範囲で続きました。
2026年8月の台風により被害を受けられた奄美地方の皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
自社で確認すること: 品目別の持続日数(在庫日数)。代替の港と便。通常便が再開するまでの営業形態。
カード5: 家畜伝染病 —— 「自社で発生しなくても止まる」
畜産関連、または出水市周辺に事業所のある方は、ここを確認してください。
鹿児島の農業産出額は全国2位(2024年)で、そのうち畜産が約64%を占めます。県は、BCPで備えるべきリスクとして家畜伝染病を明示しています。
出水市はツルの越冬地で、県は毎年10月から翌年5月を「飼養衛生管理基準遵守強化期間」に設定しています。2024年11月には出水市の採卵鶏農場で疑似患畜が確認され、約11万3千羽の殺処分と、移動制限区域・搬出制限区域の設定が行われました。
発生農場でなくても、制限区域に入るだけで移動と出荷が止まります。防疫は「発生させない対策」と「発生地域に入ったときの継続手順」の両方が要ります。
ハザードマップ: 鹿児島県 津波浸水想定/鹿児島県 火山災害への備え/鹿児島県 鳥インフルエンザ情報
浸からなかった会社の水も、止まった
鹿児島は「無傷でも止まる」の実例を、三つの型で持っています。
道路の停止 —— 2025年8月・国道10号網掛橋
橋は落ちていません。しかし川底の損傷で、1日約2万5,000台が通る幹線が約3カ月にわたって止まりました。代替の東九州道には無料措置がとられましたが、迂回は時間と燃料のコストになり、県央の物流網全体が影響を受けました。
自社の建物が無事でも、仕入先、配送先、従業員の通勤路のどこか1本が数か月止まったら、何日目から売上に響きますか。
噴火警報(レベル5)下の停止 —— 2022年7月・桜島
桜島は7月24日の夜から27日の夜まで「レベル5(避難)」でした。避難の対象は限られた地区でも、警戒レベルと報道は、観光、来訪、受発注の判断に県全域で影響します。
「レベル5」の速報が出た夜、翌朝の営業、出荷、予約をどうするか。決めてある会社は、どれだけあるでしょうか。判断基準がなければ、安全側に倒して止めるしかない。それも損失です。
制限区域の停止 —— 毎冬の防疫
2024年11月、出水市の1農場での発生により、周辺に移動制限区域と搬出制限区域が設定されました。発生していない農場や関連業者も、区域内というだけで出荷、移動、人の出入りが制約されます。
毎冬来る警戒シーズンに、「発生時、うちは区域に入るか」「入ったら何が止まり、何日持つか」を地図で確認したことがありますか。
三つの型に共通するのは、被害ではなく条件の変化で仕事が止まることです。BCPが決めるべきは「壊れたものの直し方」だけではありません。条件が変わった朝の、最初の三つの判断——出勤、出荷、顧客連絡——です。
二つの問いかけ
「作るつもり」の会社が、56.7%。作れた会社は、18.9%
帝国データバンクの調査(2026年7月29日公表・調査は2026年5月18〜31日。鹿児島県企業397社・有効回答111社)では、BCP策定済みは18.9%。一方で策定意向あり(策定済み、策定中、検討中の合計)は56.7%と、全国の50.5%より高い。鹿児島の課題は意識ではなく、意向と実行のあいだにあります。
全国調査では規模間の差が大きく(大企業39.9%、中小企業18.3%)、未策定理由の上位は「策定に必要なスキル・ノウハウがない」42.2%、「策定する人材を確保できない」33.5%、「策定する時間を確保できない」28.1%。県内でも人手不足感は約半数の企業に及びます(帝国データバンク鹿児島・2026年4月: 正社員不足48.7%)。
最初の一歩として、BCP-AIで初版を作るところから始められます。ゼロから書くのではなく、直すところから始める。
鹿児島県の数値は回答111社の割合であり、県内全企業の推計ではありません。
灰との付き合い方は、誰もが知っている。それを書いた計画は、あるだろうか
桜島の噴火は鹿児島の日常であり、降灰も台風も「いつものこと」として、現場の経験則で乗り切られてきました。しかし2025年8月の大雨は、経験則の外側——特別警報、長期の幹線寸断、5日を超える断水——が現実に来ることを示しました。
経験則は人に宿ります。ベテランが休みの日、代替の判断者は同じ判断ができますか。「慣れ」を書かれた基準——降灰量、警報、欠航、制限区域に応じた出勤・出荷・連絡の判断表——に変えることが、災害常襲県のBCPの中身です。
すでにBCPがある会社へ。桜島レベル5、線状降水帯、防疫の制限区域。2022年から2025年にかけて実際に起きた三つの事象で、いまの計画をめくってみてください。該当のページがなければ、それが見直しの箇所です。既存の計画を見直すときは、BCP-AIの再生成機能で初版を作り直せます。
県の支援は、「書く」から「動かす」まで
2026年9月の台風第24号及び前線による大雨で影響を受けた事業者の方へ。鹿児島県の支援策や相談窓口は、鹿児島県の案内をご確認ください。
県の支援事業。鹿児島県は令和6年度から「中小企業事業継続力強化支援事業」を実施し、事業継続力強化計画・BCPの策定と、BCM(平常時の運用)の構築を支援しています。
専門家派遣。公益財団法人かごしま産業支援センターの専門家派遣事業で、BCP策定・BCM構築に詳しい専門家の派遣を受けられます。県のページには県内の食品製造業の活用事例が掲載されており、自社の火山灰、豪雨、防疫を実際の判断基準に落とす段階の相談先になります。
相談窓口。鹿児島県よろず支援拠点(かごしま産業支援センター内・無料)、鹿児島商工会議所、各地の商工会。
国の制度。事業継続力強化計画(ジギョケイ)の県内累計認定は750件を超えています(令和8年7月末時点)。防災・減災設備投資の税制措置や補助金審査上の加点があり、BCPの入口としても機能します。
BCP-AIで草案を作り、専門家派遣と支援事業で磨き、ジギョケイの認定で対外的な形にする。「作る→動かす→示す」の動線が、県内に揃っています。
事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。
灰も、水も、船も。自社の止まり方を、初版に書いておく。
「作るつもり」を「作った」に変えるところから。
BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。