2020年7月。あなたの会社は無事だったかもしれない。それでも国道41号は、40日間戻らなかった。
岐阜県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。
令和2年7月豪雨。下呂市萩原では総雨量1,809.5ミリを記録し、県内の6市に大雨特別警報が出ました。被害は道路260か所、橋りょう13か所、河川246か所、鉄道の不通13か所に及んでいます。
下呂市小坂町門坂では、国道41号の土台が飛騨川へ崩落しました。通行止めは約40日間続き、美濃と飛騨の間は東海環状道・東海北陸道への広域迂回を強いられます(代替路の無料措置は7月9日から8月17日まで)。
2車線での全面復旧は、翌2021年7月28日。ほぼ1年後でした。
「うちは川沿いじゃないから」「幹線道路沿いだから大丈夫」。令和2年7月は、その前提が岐阜県では成立しないことを示しました。
あなたの会社が止まる理由は、あなたの会社の中にあるとは限りません。
岐阜県のリスク
1. 地震 —— 「南海トラフの県」である前に、「日本最大級の内陸直下地震が起きた県」
1891年10月28日、濃尾地震(M8.0)。美濃地方で死者4,990人、住家の全壊50,125棟。日本の内陸直下型地震として最大級で、震源は岐阜県本巣郡根尾谷(現在の本巣市)でした。心より哀悼の意を表します。
地表には約80キロの根尾谷断層が現れ、水鳥地区の上下6メートルのずれは今も残っています(国の特別天然記念物)。
そしてこれは昔話ではありません。 県が現在の被害想定の対象としている揖斐川-武儀川(濃尾)断層帯は、この濃尾地震を起こした根尾谷断層帯と同じ濃尾断層帯に属します。県は他に長良川上流、屏風山・恵那山および猿投山、阿寺、高山・大原の各断層帯についても、震度分布と被害想定を公表しています(2019年公表・2022年更新)。
県の生活影響の推計(震度分布から算定)では、南海トラフ巨大地震で県人口の67%が断水・83%が停電の影響を受けます。揖斐川-武儀川(濃尾)断層帯の地震では断水72%・停電83%。
復旧の速さは、電気と水で違います。 停電は1日後に25〜29%まで減る一方、断水は1か月後にも6〜8%が残る推計です。いずれも条件つきの県推計であり、個社の復旧日数ではありません。
県内の主要活断層帯(国の長期評価)
地震調査研究推進本部は、主要活断層帯で起こる地震の発生確率を相対的な高さで区分しています。県内では、次の活動区間が最も高い区分(Sランク)にあります(2026年1月1日算定)。
- 木曽山脈西縁断層帯 主部(南部)(マグニチュード6.3程度)
- 高山・大原断層帯 国府断層帯(同7.2程度)
- 阿寺断層帯 主部(北部)(同6.9程度)
- 養老-桑名-四日市断層帯 北部区間(同7.4程度)
- 池田山断層(同6.8程度)
この区分は、発生時期や個々の事業所の被害を予測するものではありません。国の評価の区分は、被害の大きさを意味しません。区分が低い断層でも地震は起こり、国は「ランク分けに関わらず、どの場所でも強い揺れに見舞われるおそれがある」と注記しています。自社の所在地と断層帯の位置関係は、県の被害想定と国のハザードマップで確かめてください。
断層の評価は定性表現で示しています。国(地震調査研究推進本部)は今後30年以内の地震発生確率が3%以上を「Sランク」と表記し、地震後経過率(前回の活動からの経過時間を平均活動間隔で割った値)が0.7以上の活断層には、ランクに「*」を付記しています。同じ表に載る境峠・神谷断層帯 主部は長野県に位置するため除いています。同じ表に載る砺波平野断層帯(東部)と呉羽山断層帯は富山県に位置するため除いています。同じ表に載る森本・富樫断層帯は石川県に位置するため除いています。同じ表に載る浦底-柳ヶ瀬山断層帯は福井県・滋賀県に位置するため除いています。同じ表に載る養老-桑名-四日市断層帯 中部区間は三重県に位置するため除いています。同じ表に載る琵琶湖西岸断層帯 北部区間は滋賀県に位置するため除いています。出典: 地震調査研究推進本部「岐阜県の地震活動の特徴」(2026年1月1日算定)/同「今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧」(令和8年1月14日現在)注3
自社で確認すること: 「電気が戻れば再開」ではなく、水・冷却・衛生・トイレ・通信・受発注の復旧の時差を分けて考える。
2. 阿寺断層帯 —— 揺れより先に、「道と集落の孤立」を起こす
山間部を貫く阿寺断層帯は、国(地震調査研究推進本部)の長期評価の対象で、主部(北部)ではM6.9程度の地震が想定されています。
この断層の怖さは、揺れそのものより、山崩れによる道路の寸断と、集落・事業所の孤立にあります。
断層帯は、令和2年7月豪雨で国道41号が切れた飛騨川流域の近くを走っています。豪雨と地震——原因は違っても、山地の道路・橋・集落が細い経路でつながっている構造は同じです。経路の孤立は、繰り返し起こり得ます。
なお主部(南部)の最新の活動は、1586年の天正地震(M7.8)でした。濃尾地震に匹敵する被害をもたらしたと考えられる歴史地震です。岐阜県は1891年より前にも、日本最大級を経験しています。
自社で確認すること: 事業所へ至る経路が1本しかない区間はどこか。
3. 豪雨・土砂 —— 河川の氾濫より先に、道路・橋・鉄道が事業を止める
令和2年7月豪雨の被害は、道路260か所、橋りょう13か所、河川246か所、鉄道の不通13か所(令和2年9月4日15時時点)。
これは「公共施設の被害」ではなく、「企業の停止経路」の一覧です。
飛騨川と白川の合流部ではバックウォーターが発生し、国道41号は長期の通行止めとなりました。高山市の鈴蘭高原地区では、ヘリコプターで水と食料が運ばれ、71人は消防と警察の誘導により徒歩と車両で移動しました。
自社で確認すること: 仕入先・配送路・従業員の自宅を、河川ではなく道路と橋の被害と重ねる。
4. 孤立 —— 中山間地の孤立は「地域防災」ではなく「人・物流・顧客」の問題
県は、孤立のおそれがある地域が多数存在すると明記しています。2018年と2020年の豪雨では、実際に多数の地域が孤立しました。豪雨だけでなく、南海トラフや内陸活断層の地震でも起こり得ます。
孤立するのは住民だけではありません。 従業員の通勤、配送車、修理の要員、燃料。そして観光客・宿泊客・出張者。
自社で確認すること: 孤立が数日続いたときの在庫日数と、滞留した来訪者への対応。
5. 豪雪・凍結 —— 雪は「交通とライフラインの災害」
県は、大雪による倒木で道路の通行止め・停電・電話の不通が長時間発生し得ることを明示しています。雪崩の危険箇所は1,630か所。
飛騨・郡上だけの問題ではありません。 峠・橋・日陰の凍結と、予防的な通行止めは、美濃側への供給にも波及します。
自社で確認すること: 予報の段階で配送・出張・来客・操業を縮小する判断基準を、誰が持つか。
被害がなくても、事業は止まる
岐阜版の核心は、「被災地の外」の停止です。
国道41号、約40日の分断
直接被災していない美濃側・飛騨側の企業も、部品・製品・修理・燃料・通勤・観光客の経路を失いました。
高速道路の代替無料措置があっても、迂回の時間・車両の制約・燃料・ドライバーの制約は消えません。
製造県としての重ね —— 中部圏回廊の連鎖停止
従業者4人以上の製造業だけで、5,298事業所・199,058人・出荷額5兆6,149億円。
東海環状自動車道は延長約153キロで、令和7年8月30日の本巣IC〜大野神戸IC開通により約9割が利用できます。残る未開通は養老IC〜いなべIC間です。平時には立地の優位ですが、非常時には単一の障害点になり得ます。
「代替道路: 東海環状道」と書くだけでは、品目・車種・荷役・運転者・顧客の受入・迂回時間・燃料は、どれも担保されません。
問いを組み替える
BCPの問いは「建物は耐えられるか」ではありません。
道路・橋・水・電気・取引先のどれが止まると、誰が出勤できず、何を仕入れ・生産・納品できなくなるか。
自社、従業員の自宅、仕入先、配送路。この4つを1枚の地図に重ねたとき、岐阜の停止経路は初めて見えます。
二つの読者へ
三つの数字は、別のものです
| 何の数字か | 岐阜県の値 | 読み方 |
|---|---|---|
| 事業継続力強化計画の累計認定 | 2,200件を超える(令和8年7月末時点) | 国の制度に認定された件数。BCPの策定率ではありません |
| BCP策定意向あり | 49.7%(全国平均を0.8ポイント下回る) | 策定済み・策定中・検討中の合計です(帝国データバンク 東海4県版・2026年7月10日公表・調査は2026年5月18〜31日) |
| 県独自の策定済み率 | 同一条件の公開値なし | 推測値は掲載しません |
TDBの調査は全国の企業を対象とした標本調査で、県別の値は回答した企業の集計です。県内の全企業の推計ではありません。
まだ策定していない会社へ
「うちは小さいから」「内陸で津波もないから」。
岐阜県の停止要因は津波ではありません。道路・橋・断水・停電・雪・孤立です。規模の大小に関係なく、経路は等しく切れます。
すでに2,200件を超える県内の事業者が、国の制度で第一歩を踏み出しています。策定の意向がある企業も半数近くにのぼります。始めるかどうかは、今日選べます。
最初の一歩は、低いところにあります。県の地震・風水害の簡易モデルから始められます。完璧な計画より、「孤立したら」「41号が止まったら」を1枚書くことから。
計画はあるが動かない会社へ
4つ、点検してみてください。
- 幹線道路が40日間止まる想定はありますか。「数日で復旧」の前提になっていませんか。
- 断水が1か月続く地域に、自社や取引先が入っていませんか。
- 大雪の予報の段階で、配送・出張・来客・操業を縮小する判断基準はありますか。
- 宿泊客・観光客・出張者・配送員など、「従業員でない滞留者」は対象に入っていますか。
計画は、作って保管するだけでは足りません。教育・訓練、点検・是正、経営層による見直しを繰り返して、はじめて動きます。
岐阜県の支援・地域資源
| 資源 | 内容 |
|---|---|
| 岐阜県のBCP支援 | 基本モデル、ガイドライン、地震・風水害の簡易モデル、策定・見直し・訓練の支援。地震だけでなく水害・感染症・サイバー攻撃を含む設計です |
| 内陸直下地震の被害想定・生活影響調査 | 5つの断層帯の震度分布と被害想定、断水・停電の時系列の推計。自社の住所・従業員宅・取引先を重ねる素材になります |
| 孤立地域対策・雪害タイムライン | 孤立の可能性がある地域の情報と、予報の段階からの行動の整理。「予報段階の操業判断表」をつくる下敷きになります |
| 事業継続力強化計画 | 国(中小企業庁)の認定制度。県内の累計認定は2,200件を超えています。防災・減災投資、取引先への説明、資金調達に使えます |
「ゼロから独力で」ではありません。県のモデルと、BCP-AIで作った初版を並べて使えます。
事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。
濃尾地震は1891年。同じ断層系が、今も県の想定対象です。道路が40日間戻らなかったのは2020年、令和2年7月豪雨のときです。
次に道が止まる日のために、今日できる備えがあります。
BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。