あの日が日曜の朝でなかったら——天神のビルから割れ落ちた数百枚のガラスは、通勤の人波の上に降っていた。
福岡県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。
2005年3月20日、午前10時53分。福岡県西方沖でマグニチュード7.0の地震が発生し、福岡市などで最大震度6弱を観測しました。天神では1960年代に建てられた大型ビルで窓ガラスが数百枚割れ、歩道に落下しています。
人通りの少ない日曜の午前だったため、都心での人的被害は最小限にとどまりました。ビルの倒壊はゼロです。それでもエレベーターは止まり、鉄道は見合わせ、電話はつながらず、都心の機能は止まりました。
あの地震で動いたのは、警固断層帯の北西部だけでした。福岡都市圏の直下を貫く南東部は動かないまま残っており、政府は発生可能性が高いグループ(S*ランク)に分類しています。
そして2025年、福岡県は14年ぶりに被害を計算し直しました。答えは、前回のほぼ2倍でした。
2005年に「半分」を経験した福岡で、御社の計画はいつの想定のままでしょうか。
福岡県のリスク
1. 警固断層帯南東部 —— 都心直下の「割れ残り」
2005年の西方沖地震は、警固断層帯の北西部の活動でした。南東部(博多湾から福岡市の中心部を経て筑紫野市まで)は未活動のまま残っており、地震調査研究推進本部の評価はS*ランクです。
福岡県は2025年10月、14年ぶりに地震防災アセスメントを更新しました。警固断層帯の想定被害は、死者・建物被害ともに前回のほぼ2倍に引き上げられています。
「想定は年々小さくなる」のではありません。調査が進むほど、大きくなっています。
この想定では、県の最大のケースで、最大震度7(福岡市・春日市・太宰府市など)となり、1,800人の方が亡くなり、負傷者は1万2,000人、避難者31万9,000人、建物の全壊・全焼は3万6,000棟とされています。2005年の西方沖地震では1名が亡くなり、1,069人が負傷しました。心より哀悼の意を表します。
2026年6月には、海域の小呂島近海断層帯との連動ケースも初めて公表されました。
県内の主要な活断層は7本あります(小倉東、福智山、西山、宇美、警固、日向峠-小笠木峠、水縄)。北九州・筑豊・筑後それぞれに固有の断層があり、「福岡市だけの話」ではありません。
県内の主要活断層帯(国の長期評価)
地震調査研究推進本部は、主要活断層帯で起こる地震の発生確率を相対的な高さで区分しています。県内では、次の活動区間が最も高い区分(Sランク)にあります(2026年1月1日算定)。
- 警固断層帯 南東部(マグニチュード7.2程度。海域・沿岸に分布)
- 福智山断層帯(同7.2程度)
この区分は、発生時期や個々の事業所の被害を予測するものではありません。国の評価の区分は、被害の大きさを意味しません。区分が低い断層でも地震は起こり、国は「ランク分けに関わらず、どの場所でも強い揺れに見舞われるおそれがある」と注記しています。自社の所在地と断層帯の位置関係は、県の被害想定と国のハザードマップで確かめてください。
断層の評価は定性表現で示しています。国(地震調査研究推進本部)は今後30年以内の地震発生確率が3%以上を「Sランク」と表記し、地震後経過率(前回の活動からの経過時間を平均活動間隔で割った値)が0.7以上の活断層には、ランクに「*」を付記しています。同じ表に載る菊川断層帯 中部区間は山口県、日奈久断層帯 日奈久区間・八代海区間は熊本県、雲仙断層群 南西部(北部)は長崎県、周防灘断層帯 主部区間は山口県・大分県に位置するため除いています。出典: 地震調査研究推進本部「福岡県の地震活動の特徴」(2026年1月1日算定)/同「今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧」(令和8年1月14日現在)注3
自社で確認すること: 自社の住所での震度と液状化。県は断層ごとの震度予測・液状化予測マップを公開しています。
2. 都市型被害 —— 建物が無事でも街が止まる
2005年に実際に起きたのは、ガラスの落下、エレベーターの閉じ込め、百道浜などの液状化、鉄道の見合わせ、電話の輻輳でした。
博多・天神地区では、多くの人が帰宅の足を失うことが想定されています。
建替えが進む一方で、1960年代から70年代に建てられた雑居ビルも残っています。テナント企業は、自社が入るビルの耐震やガラスを選べません。
自社で確認すること: 入居しているビルの築年と、ガラス・エレベーターの状態。そして帰宅困難になった従業員をどう扱うか。
3. 九州北部豪雨型の水害・土砂 —— 「元通りの復旧」を前提にできない
2017年7月5日から6日にかけて、朝倉市で24時間雨量が545.5ミリ(観測史上1位)、局地的には約1,000ミリに達しました。河川の氾濫、山腹の崩壊、大量の流木が、道路・橋梁・鉄道を同時に破壊しています。
JR日田彦山線(添田〜夜明)は復旧まで6年を要し、輸送手段はBRTに転換されました。 復旧が長期化し、災害の前と同じ形に戻るとは限らないことを、県内の実例が示しています。
農地・農業施設・観光の回復は、建物の復旧よりさらに長期化します。
2026年6月24日からの大雨により、柳川市、うきは市、みやま市、広川町に災害救助法が適用されました。
この大雨で被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
自社で確認すること: 取引先や配送経路が、6年単位で形を変える可能性。代替の経路と手段。
4. 港湾・空港・幹線交通の結節点リスク
博多港、北九州港、福岡空港、新幹線、都市高速。ここに九州の内外の人流と物流が集中しています。ここが止まると、直接被災していない九州全域の企業活動に波及します。
自社で確認すること: 博多・天神に1日入れないだけで、どの業務が止まるか。
自社が無傷でも、事業は止まる
2005年 —— 倒壊ゼロでも、都心は止まった
天神・博多のオフィス街では倒壊はゼロでした。それでもガラスの落下、エレベーターの停止、鉄道の見合わせ、電話の輻輳で、都心の業務は止まりました。
「建物の無事」と「事業の継続」は別問題だと、福岡は2005年に経験しています。
2017年 —— 事業所がなくても、止まった
朝倉・東峰に事業所がなくても、道路と鉄道の分断で配送・集荷・通勤が止まった企業は、流域の全体に及びました。沿線の輸送は6年後、鉄道ではなくBRTとして再開されています。
福岡の企業が止まる4つの経路
自社の倒壊より先に、この4つが来ます。
- 従業員が来られない —— 都市圏の通勤と帰宅困難
- モノが動かない —— 港湾・空港・幹線道路
- 取引先が止まる —— 九州の供給網の結節点
- カネと情報が止まる —— 決済・通信・データ
天神・博多に1日入れないだけで、御社のどの業務が止まりますか。
二つの読者へ
まだ策定していない会社へ
福岡県の「策定意向あり」は47.7%(帝国データバンク・2026年6月25日公表・調査は2026年5月18〜31日の都道府県別)で、全国の50.5%を下回ります。九州の経済の中心にある福岡でも、意向は全国平均を下回ります。
福岡県の数値は回答企業の割合であり、県内全企業の推計ではありません。
九州・沖縄の策定済み率は17.1%(帝国データバンク 九州版・2026年7月1日公表・調査は2026年5月18〜31日)で、全国は21.4%。全国では中小企業の18.3%と大企業の39.9%の差が、約22ポイントあります。
未策定の理由は「スキル」「人材」「時間」の不足です。意識ではなく、資源の問題です。 だから、道具で補います。
事業継続力強化計画の累計認定は3,900件を超えています(令和8年7月末時点)。入口としては、国の制度が機能しています。
計画はあるが、想定が古い会社へ
2025年10月、県の想定は「ほぼ2倍」に更新されました。2005年の直後や、東日本大震災の後に作った計画は、前提の被害想定がすでに古くなっています。
御社のBCPの想定は、警固断層帯南東部の「震度7」になっていますか。帰宅困難、港湾の停止、6年がかりの交通復旧を、織り込んでいますか。
福岡県内の支援・相談先
2026年6月24日からの大雨で影響を受けた事業者の方へ。福岡県の支援策や相談窓口は、福岡県の案内をご確認ください。
福岡県「事業継続力強化支援計画」は、商工会・商工会議所と市町村が共同で小規模事業者の防災・減災を支援する認定制度です。
福岡商工会議所では、中小・小規模事業者へのBCPと事業継続力強化計画の策定支援を無料で行っています。
県の一次情報として、「地震に関する防災アセスメント調査報告書」(2025年)、断層ごとの震度予測・液状化予測マップ、津波浸水想定があります。住所単位で確認できます。
事業継続力強化計画は国の認定制度です。
支援の網は揃っています。まだ十分に使われていません。
事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。
警固断層帯の南東部は、発生可能性が高いグループ(S*ランク)。2005年に「半分」を経験した福岡で、残り半分に備える計画を、今日から作れます。
朝倉の雨は、観測史上1位でした。次の観測史上1位が、御社の流域でないとは限りません。
BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。