2025年12月8日、午後11時15分。真冬の八戸で震度6強、そして津波警報。あの夜は、県が想定する被害最大の条件の予告編だった。
青森県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。
地震の翌月、青森市の積雪は147センチに達した。青森の災害は、雪の上にやってくる。
2025年12月8日、午後11時15分。青森県東方沖でマグニチュード7.5の地震が発生し、八戸市で震度6強を観測しました。11時23分、太平洋沿岸に津波警報。真冬の深夜、沿岸の住民と従業員は高台へ向かいました。八戸港への津波の第一波は11時48分。翌9日の午前2時、気象庁は「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表しました。今後1週間、巨大地震に注意、と。県内12の市町村に災害救助法が適用され、断水、道路の損傷、学校の休校、八戸港ふ頭の被害が報告されました。12日にはM6.9が再び発生し、再度の津波注意報が出ました。
青森県の被害想定が描く本番——太平洋側の海溝型地震——で被害が最大になる条件は、「積雪のある冬の夕方」です。12月8日の夜は、その条件のすぐ隣で起きました。そして地震の翌月、青森市の積雪は147cmに達し、県は豪雪対策本部を設置しました。
地震と豪雪は、青森では別々に来ません。次に備える時間は、いまこの瞬間も減っています。
一枚の想定と、二つの実体験
県の想定 —— 太平洋側海溝型地震
県の令和3年度地震・津波被害想定調査では、太平洋側の海溝型地震で死者は5万3千人、うち津波によるものが5万2千人と想定されています。被害が最大となるのは、積雪で避難の速度が落ちる「冬の夕方」のシーンです(想定は夏12時、冬18時、冬深夜の3シーン)。発災直後の断水は67.9万人、停電の影響は97.4万人。1日後の避難者は最大31.1万人、直接の経済被害は最大6.3兆円です。
これらは「早期避難者の比率が低い場合」などの条件に基づく、対策前の予測であり、確定値ではありません。県自身がそう明記しています。
実体験① —— 2025年12月8日、青森県東方沖地震
M7.5、八戸市で震度6強(おいらせ町・階上町で6弱)、午後11時15分の発生。太平洋沿岸に津波警報が出され、八戸港で最大40cmの津波を観測しました。翌9日午前2時から16日まで、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」のもと、1週間の「特別な警戒」の中での操業になりました。
災害救助法は県内12市町村(八戸市、三沢市、むつ市、野辺地町、七戸町、東北町、六ヶ所村、おいらせ町、大間町、東通村、南部町、階上町)に適用されました。事業に直結する公的な記録として、八戸港の複数のふ頭で係留施設と荷さばきに被害。七戸町では水道橋の損傷で最大459世帯が断水。通信ビルの鉄塔損傷で、周辺の世帯に避難指示。12月9日時点で、県立28校・市町村立132校が休校。揺れの大きかった市町村では、地盤の緩みを考慮して大雨警報の基準が引き下げられました。
12日にはM6.9が再び発生し、再度の津波注意報。地震活動は2026年に入っても続き、6月25日には岩手県沖を震源とする地震で階上町が震度6強を観測し、県は災害対策本部を設置しました。
実体験② —— 令和8年 青森県豪雪(2026年1〜3月)
2026年1月29日、青森市の積雪は147cm、弘前市と五所川原市で105cm。同じ日、県と青森市が豪雪対策本部を設置しました。JR津軽線は全線、奥羽線と五能線は一部区間で終日運休になりました。
豪雪対策本部は1月29日に設置され、被害報は21報に及びました。期間中には、21市町村への災害救助法の適用、屋根の雪処理への自衛隊派遣、県立学校24校の休校。道路の除排雪資機材は、県建設業協会や県トラック協会などとマッチングされました。前年の冬も豪雪災害対策本部が設置されており、2季連続の「災害級の雪」でした。この冬の雪で亡くなられた方々に、心より哀悼の意を表します。
従業員、配送、来客、除雪、燃料が、同時に細る。雪は「日常の延長」ではなく、事業を止める災害です。
12月に地震、1月に豪雪。青森の事業継続は、この二つが同じ冬に重なる前提で考えます。
自社が無傷でも、事業は止まる
後発地震注意情報の1週間 —— 2025年12月9日〜16日
政府は「通常の社会活動を継続したうえで」1週間の警戒を求めました。休業ではなく、警戒しながらの操業です。
この1週間、沿岸の事業者は「次に警報が出たら誰がどう避難するか」「夜間の発災なら誰が判断するか」を問われました。12月12日のM6.9と津波注意報は、その「2回目」が実際に来ることを示しました。16日、知事は注意情報の終了に合わせて、震災前の日常に戻るよう呼びかけました。
注意情報が明日また出たら、御社は何を変え、何を続けますか。それを紙にしたものが、BCPです。
港と道路が止まれば、無傷の会社も止まる
八戸港は東日本大震災で防波堤と臨海部の工場が被害を受け、物流が停滞しました。県は、青森港・八戸港・むつ小川原港の港湾BCPを策定しています。港の側には、復旧の計画がある。荷主の側の計画は、あるでしょうか。
12月8日の地震でも、八戸港の複数のふ頭で係留施設と荷さばきに被害が出ました。港湾BCPは「目標期間をかけて回復させる」計画であり、即時の通常化ではありません。
豪雪では、道路、鉄道、空港が同時に細ります。農林水産、食品、冷蔵網に依存する青森の産業構造では、輸送と温度管理の停止が、そのまま商品の廃棄と売上の停止になります。
港、道路、冷蔵、取引先。自社の外にある四つの前提のうち、何日止まったら、御社の売上が止まりますか。
県内で、実際にあったこと
公的な記録に残る、県内の事例です。
12月8日の地震で設備が故障し、整備のため新規の予約を止めた宿泊・集客施設がありました。建物は使えるのに、受注を止めざるを得なかった。
豪雪の期間には、延べ6,740軒が停電しました。雪の直接の被害がなくても、電気が止まれば営業は止まります。
12月8日の地震で、八戸港の八太郎2号埠頭のコンテナヤードでは、実入りコンテナ約100本を含む423本が動かせなくなりました。荷物は無事でも、動かせなければ出荷は止まります。
階上町の調味料工場では、建屋と設備に被害は確認されなかったものの、井水の濁りで操業が止まりました。建物が無事でも、使う水が濁れば止まります。
冬という乗数
同じ停止でも、冬は重くなります。避難は遅く、復旧は寒く、燃料は細り、道路は狭い。県の想定が「冬の夕方」で被害最大になるのは、この乗数のためです。
12月8日は深夜の津波警報からの避難、翌週は雪の予報の中の警戒、翌月は積雪147cm。2025年から26年の冬は、この乗数が続いた冬でした。
二つの読者へ
まだ策定していない経営者へ
帝国データバンク青森支店の調査(2026年5月調査・回答79社)では、BCP策定済みは15.2%、未策定は40.5%。全国の21.4%を下回ります。回答企業群の値であり、県内全事業所の推計ではありません。
策定していない理由は、全国調査で「スキル・ノウハウがない」42.2%、「人材を確保できない」33.5%、「時間を確保できない」28.1%。意識ではなく、経営資源の問題です。
青森には、いま始める理由が三つあります。12月8日を経験した直後の今が、社内の当事者意識が最も高い時期であること。「やろうと思っている」と「紙になっている」の差は、次の警報の夜に出ること。そして国の事業継続力強化計画(ジギョケイ)の県内累計認定は530件を超えており(令和8年8月末時点)、認定を受ければ税制・金融・補助金審査上の加点の実利があること。
12月8日の夜、決めていなかったことを、次の冬までに決める。それだけで、最初のBCPになります。
策定済みの会社へ —— 12月8日はテストだった
午後11時15分の地震で、御社のBCPは動きましたか。安否確認は何分で終わりましたか。津波警報のもとで、誰が避難を指示しましたか。後発地震注意情報の1週間、計画のどのページを開きましたか。
開かなかったなら、それは計画が形だけになっているサインです。実際の発動記録を残して、見直してください。12月8日、12月12日、そして1月の豪雪。検証の機会は、一冬に三度ありました。
冬季のシナリオ——積雪時の避難経路、夜間の発災、暖房と燃料、除雪の分担——が入っていないBCPは、青森では未完成です。
青森県の支援機関・制度
12月8日の地震で、実際に動いた支援網。県は「特別災害による県税の減免に関する特別措置要綱」に基づく減免の措置をとり、日本政策金融公庫などが特別相談窓口を設置しました。2026年6月の岩手県沖の地震でも、八戸市が支援制度の一覧を公表しています。
事業継続力強化支援計画。県は市町村と商工会・商工会議所による共同計画を認定・公表しています。小規模事業者は、最寄りの商工団体でジギョケイ・BCPの策定支援を受けられます。
事業継続力強化計画(ジギョケイ)。単独型と連携型があり、認定により税制措置、金融支援、補助金審査上の加点があります。
港湾BCPと物流戦略。県の港湾BCP(青森港・八戸港・むつ小川原港)と青森県ロジスティクス戦略は、自社のBCPを接続すべき「地域側の計画」です。
相談窓口。21あおもり産業総合支援センター、県内各地の商工会議所・商工会が、策定の相談先です。
事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。
初雪が来る前に。12月8日に決めていなかったことを、いま紙にしませんか。
BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。