2023年7月15日、秋田市の中心部は水の中にあった。被害額約1,549億円——その年、全国で最も大きな水害は、秋田で起きていた。
秋田県のBCP(事業継続計画)── 県内の災害リスクと、建物が無事でも事業が止まる経路を確かめるページです。
2023年7月14日からの記録的な大雨。秋田市仁別では2日間で415.5ミリの雨が降り、県内6地点で72時間降水量が観測史上1位を更新しました。太平川など県内18の河川が氾濫し、秋田市の中心部は内水氾濫で広く冠水しました。県内の住家被害は7,375棟。そのうち8割超が秋田市に集中しました。
この豪雨の水害被害額は約1,549億円。秋田県の統計開始以来最大で、2023年の年間被害額(約1,590億円)は、全国で最も大きなものでした(国土交通省・確報値)。
被害は、浸水した建物だけでは終わりませんでした。秋田新幹線とJR在来線の全線が運休し、全線の再開は約4週間後の8月11日。県内の主要な宿泊98施設では、直接の被害がなかった地域を含め、ほぼすべての施設でキャンセルが発生しました(県検証報告書)。
建物が無事でも、道路と鉄道と客足が止まれば、事業は止まる。秋田はそれを、2023年に経験しています。あの夏、あなたの会社は何日止まりましたか。そして次に備えて、何を変えましたか。
秋田県のリスク
カード1: 豪雨・内水氾濫 —— 県都の中心部が沈んだ
2023年7月豪雨では、住家被害7,375棟、水害被害額約1,549億円。秋田市中心部の内水氾濫で、秋田駅の東西の市街地が浸水しました(市上下水道局)。冠水した道路では、移動そのものが危険になります。
大雨は毎年、場所を変えて来ています。2024年7月の大雨に続き、2025年8月には能代で1時間65.0ミリ、由利本荘市本荘で1時間117.5ミリと、いずれも観測史上1位の値を更新しました(秋田地方気象台)。
浸水は建物、設備、在庫、車両を同時に奪います。さらに道路、鉄道、通勤、配送が止まり、「片付けはできるが営業できない」期間が続きます。
カード2: 地震・津波 —— 最大想定は「冬の深夜」に
県が平成25年(2013年)8月に公表した地震被害想定では、最大で1万人を超える死者が出るとされています。1983年の日本海中部地震(M7.7)では、全国の死者104人のうち100人が津波によるものでした。亡くなられた方々に、心より哀悼の意を表します。
県の想定では、最大津波高は10メートルを超え、早い地点では発生から十数分で浸水が始まります。ライフラインは冬の条件で、断水・停電・都市ガスの供給支障が広い範囲に及び、復旧には数週間かかるとされています。
1983年の日本海中部地震では、津波が峰浜村(現八峰町)で14mに達し、県内の被害総額は1,351億円。秋田港、能代港、船川港は液状化で、港湾機能のほぼ全部が被害を受けました。
カード3: 雪 —— 災害を重くし、復旧を遅らせる
県の被害想定は、被害が最大となる条件を「冬の深夜」と置いています。積雪は建物の倒壊を増やし、避難を遅らせます。さらに同じ想定は、冬季は積雪の影響で復旧作業の効率が落ちると設定しています。雪国では、同じ被害でも復旧が長引く。復旧に数週間かかるという見通しは、この「冬の係数」を含んだ数字です。
平時の雪も、事業を止めます。出勤、配送、燃料、除雪要員、屋根雪対応が毎年の制約になり、暴風雪による道路の通行止めと立ち往生は、物流と顧客対応を直撃します。
「地震×冬」「大雨×農繁期」のように、季節を重ねてリスクを見るのが、秋田の前提条件です。
カード4: 物流・取引網 —— 港と一本道の県
秋田港、能代港、船川港は、1983年に液状化で機能をほぼすべて失った実績があります。港が止まれば、素材、金属、エネルギー(洋上風力関連を含む)、農産物の出入りが止まります。2023年7月の豪雨では、秋田新幹線とJR在来線の全線が運休し、全線再開まで約4週間。高速道路と国道の寸断が重なれば、県外との人流と物流は、細い代替経路に集中します。
事業所が無傷でも、原材料が入らない、製品を出せない、人が来られない、の三つで止まります。集荷、冷蔵、市場、検収、入金まで含めた「経路の地図化」が第一歩です。
ハザードマップ: 秋田県防災ポータル(地震被害想定・津波浸水想定・河川水位・道路規制)
自社が無傷でも、事業は止まる
無傷の宿のキャンセル
県内の主要宿泊98施設では、直接の被害がなかった地域を含め、ほぼすべての施設で予約のキャンセルが発生しました(県「令和5年大雨災害の検証と今後の対応」)。建物は乾いていても、「秋田=被災地」の報道と交通の遮断が、客足を止めました。
鉄道4週間
秋田新幹線、JR在来線、第三セクター鉄道のすべてで運休または区間運休が発生し、全路線の再開は8月11日。通勤、出張、観光、貨物が約1か月、平常に戻りませんでした。
備えが効いた実例
ガスの製造所が浸水した県内の都市ガス事業者は、非常用発電により都市ガスの製造と供給を継続し、供給支障を出しませんでした(内閣府被害状況報告)。同じ豪雨の中で「止まった事業」と「止まらなかった事業」を分けたのは、被害の大小ではなく、事前の備えでした。
水が止まった
断水は県内5市町・最大約1万1千戸。水を使う業種——食品、飲食、宿泊、医療福祉——は、浸水ゼロでも操業の条件を失いました。
「ハザードマップで自社が白い=安全」ではありません。2023年に止まった事業の多くは、浸水域の外にありました。秋田の停止経路は、「雨・雪・地震→道路・鉄道・港・電気・水→人・モノ・客」の三段連鎖です。BCPで決めるべきは建物の守り方だけでなく、連鎖のどこで、何日、どう耐えるかです。
読者への問いかけ
数字の現在地
帝国データバンク 秋田県版の調査(2026年8月3日公表・調査は2026年5月18〜31日)で、秋田県企業のBCP策定率は19.4%。前年から6.5ポイント上がりましたが、全国の21.4%には届いていません。「策定意向あり」は40.9%で、全国の50.5%を下回ります。策定済み、策定中、検討中の合計であり、策定済みの率ではありません。全国では、中小企業の策定率は18.3%にとどまり、大企業(39.9%)との差は20ポイントを超えます。
秋田県の数値は回答企業93社の割合であり、県内全企業の推計ではありません。
事業継続力強化計画(ジギョケイ)の県内累計認定は520件です(令和8年7月末時点)。
まだ策定していない会社へ
2023年7月、あなたの会社は何日止まりましたか。あるいは、たまたま止まらなかっただけですか。次は「大雨×農繁期」かもしれないし、「地震×真冬の深夜」かもしれない。県の想定では、冬の復旧は夏より遅くなります。
必要なのは分かっている。スキル、人手、時間がない。帝国データバンクの調査で未策定の理由の上位は、その三つです。完璧な計画書ではなく、「誰が、いつ、何を判断するか」を決めた1枚から始められます。ジギョケイは中小企業のための簡易なBCPで、認定されれば税制措置、金融支援、補助金審査上の加点などがあります。
あの豪雨を経験した会社には、すでに材料があります。あのとき困った順に書き出せば、それがリスクの洗い出しになります。
策定済みだが動かしていない会社へ
その計画に「雪」は入っていますか。冬の断水・停電・都市ガスの供給支障が数週間に及ぶという県の想定で、自社の在庫、燃料、代替勤務は何日もちますか。
2023年の豪雨のとき、計画どおりに動けましたか。動けなかった箇所こそ、次の改訂点です。
県やあきた企業活性化センターには、BCPの策定や実効性を高める取り組みを支援する制度があります。計画がある会社だけが使える制度もあります。計画を「設備と訓練」につなげる入口に。
秋田県の支援制度・相談先
BCPの策定・実効性向上の支援。県やあきた企業活性化センターには、BCPの策定や実効性を高める取り組みを支援する制度があります。(公募の時期と条件は年度により異なります)
事業継続力強化計画(国)。中小企業向けの簡易なBCP認定制度。県内の累計認定は520件。税制措置、金融支援、補助金審査上の加点など。
秋田県防災ポータル。地震被害想定、津波浸水想定、河川水位、道路規制、ライフライン各社へのリンクを集約しています。
商工会議所・商工会・よろず支援拠点。策定の伴走と専門家派遣の窓口です。
「補助金があるから作る」のではなく、「作った計画を、補助金で設備と訓練に変える」。この順序です。
事業継続力強化計画の認定や、補助金・融資などの可否は、各制度の要件と審査によります。BCP-AIで作成した計画がそれらを保証するものではありません。本ページの認定件数は、BCPを策定した企業の割合や利用者数とは別の数値です。
秋田は、すでに経験している。忘れる前に、計画にする。
BCP-AIは、所在地や業種などの質問に答えるだけで、自社のBCP(事業継続計画)の初版を作成できます。